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【川崎大輔の流通大陸】中古車販売店から見たインドネシア中古車市場

2017年9月4日(月) 12時49分(タイ時間)
クマヨランのパサール・モビルの画像
クマヨランのパサール・モビル
《撮影 川崎大輔》
WTCマンガドゥアの画像
WTCマンガドゥア
《撮影 川崎大輔》
ブカシの中古車販売店の画像
ブカシの中古車販売店
《撮影 川崎大輔》
パサール・モビルの画像
パサール・モビル
《撮影 川崎大輔》
ジャカルタの交通渋滞の画像
ジャカルタの交通渋滞
《撮影 川崎大輔》
ブカシの中古車販売店(2)の画像
ブカシの中古車販売店(2)
《撮影 川崎大輔》
2017年8月、インドネシアの首都ジャカルタ周辺の中古車販売店を訪問。現場にいるインドネシア人から、現在のインドネシア中古車市場について生の声を聞いてきた。

◆ インドネシアの中古車市場の特徴

インドネシアの中古車市場を理解するポイントは3つ。1つ目が「ブローカー介在型流通」という点だ。

昔の日本と全く一緒で、インドネシアではブローカーが暗躍しやすい市場の構造となっている。「仕入れではブローカーを利用する。うちはブローカーが5人以上いる」(ジャカルタ周辺の中古車販売店オーナー)。インドネシアではブローカーから中古車を仕入れることが多い。そのためブローカーネットワークの大きさと質が中古車ビジネスの強みとなる。また、ブローカーの重要な役割は、都市から地方へ中古車を流通していることがあげられる。

2つ目は「高値安定の中古車市場価格」。特にトヨタ車の売れ筋はリセールバリューが高い。

中古車販売店の数は、インドネシア全体で1万5000か所ほど。ジャカルタ周辺の主要な中古車店集積エリアだけで中古車市場シェアはインドネシア全体の30%ほど。ジャカルタ周辺だけでも大きな市場ではある。

しかし最近の地方での中古車購入比率が増えている。隣接する西ジャワ州、東ジャワ州などでも市場規模は大きい。インドネシアにはスラバヤ(ジャワ島)、メダン(スマトラ島)、マカッサル(スラウェシ島)など人口100万人以上の地方都市が10か所ある。このような地方都市はまだ中古車の供給が足りておらず中古車市場価格は、都市部より20%以上も高い価格となっている。地方での中古車市場が拡大することで、中古車市場価値は、しばらく安定しそうだ。

3つ目は「情報の非対称性」で、中古車サイトによる中古車掲載は増えているが、品質評価の基準がないこと、ブローカーが暗躍(個人間売買といわれていてもブローカー介在の可能性が高い)しており、エンドユーザは車に詳しくなければ騙されやすい構造、となっている。

日本が経験した中古車市場の変化をインドネシアも辿る可能性が高く、将来を先取りできるという点で日本企業は、インドネシアにおける自動車アフタービジネスにおいて優位な立ち位置にいる。自動車の品質基準の統一化、情報の透明化は重要な視点となるだろう。

◆中古車販売台数が、2016年に比べて20%近く減少

インドネシアの北ジャカルタにある大規模中古車モール、WTCマンガドゥア。ここはジャカルタで最も中古車展示台数が集まっている。1歩WTCのビルの中に足を踏み入れると独特な雰囲気に驚くが、ビルの5階から13階の駐車場1面に中古車が並べられている。全部で約3000台の中古車がここで販売されていると聞く。

「1番多い中古車が販売されてるここ(WTC)でも、2017年に入ってから中古車の販売台数が少なくなっている。ほか(中古車販売エリア)でも販売台数が低下している」(インドネシア人中古車販売店オーナー)。更に「最近は、中古車よりも新車(小型)を選ぶ」と指摘する。

インドネシアにおける新車市場の軟化で、新車販売店は大幅なディスカウントを始めた。特に、インドネシア政府が奨励している低価格・低燃費自動車(LCGC、ローコスト・グリーンカー)の新車価格は中古車の価格に近づいてきている。中古車市場の需要が停滞している1つの理由として、今まで中古車を購入してた顧客層が新車にまで選択肢を広げられるようになったためだ。

インドネシアの新車販売台数は2013年に120万台を突破したが、それをピークに経済低迷などが続き新車市場が一気に縮小。2016年、3年ぶりに新車販売台数が前年から増えて106万台まで回復した。回復した要因としてインドネシアの景気が順調に回復していることや金利安という側面もあるがLCGCに人気が集まり、LCGCの市場が新車販売全体を押し上げる結果となっている。

◆価格が下がらない中古車市場

北ジャカルタのクマヨランにある国際展示場からほど近いパサール・モビル(自動車市場)には、中古車販売店と自動車部品販売店が集まっている。約600店舗の自動車関連の店がある。

パサール・モビルのブロックSにある中古車販売店オーナーは「中古車の販売台数は去年より減っているが、中古車の販売価格は去年と余り変わっていない」と語った。ほとんどの中古車販売店で販売されている中古車は高年式(3年以内)だ。1台100万~200万円の車が展示車の8割近くを占めている。販売台数は減少しているインドネシア中古車市場だが、価格の下落がなく、依然として高い相場で推移している。

◆ 2018年以降のインドネシア中古車市場の展望

「これからは(インドネシアの)景気も良くなって、中古車の販売台数も増えてくる」(ブカシの中古車販売店オーナー)。新車ディスカウントの影響により中古車需要が増えないのではという懸念もあることは事実だ。一方で2017年以降のインドネシア経済は安定した成長が見込まれているほか、可処分所得の多い中間層の増加により中古車需要の増加が見込まれていると判断。楽観的な見方かもしれないが、2017年8月に筆者自らが行った30名以上の中古車販売店オーナーへのインタビューによれば、8割近くの中古車販売店オーナーは「中古車市場は今後よくなる」と語った。


インドネシア国内の1000人あたり保有台数は日本の約600台に対して約80台前後だ。自動車の普及率はまだ伸び代が大きい。インドネシアの中古車市場はまさに黎明期といえよう。

<川崎大輔 プロフィール>
大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔@レスポンス》


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