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海外生活10年以上でも購入不可の事例多数 日本人利用のJR周遊券「ジャパン・レール・パス」 要は在外公館発行の「在留届の写し」

2017年9月15日(金) 12時21分(タイ時間)
普通車利用7日間有効のジャパン・レール・パスの画像
普通車利用7日間有効のジャパン・レール・パス
無料で発券してもらえる指定券、新幹線指定券。3セク区間の別途請求運賃の切符の画像
無料で発券してもらえる指定券、新幹線指定券。3セク区間の別途請求運賃の切符
 特急料金も座席指定料金も込みで7日間3万円弱という、通常のJR運賃を知る日本人には破格に思える価格設定のJR周遊券「ジャパン・レール・パス」。

 外国人旅行者を対象とした周遊券だが、利用資格を満たす海外在留邦人(JRの表記で海外在住日本人)に対しても販売される。その海外在住日本人向けの販売が今年3月末をもって終了となった。利用資格を証明する手段がまちまちで、JRが厳格に対処しきれなかったというのが主な理由だ。2カ月後の6月には、利用資格改定を経て販売が再開されたものの、今度は海外在住日本人の間で「JRは必要書類に関して融通が効かない」という批判が挙がりはじめた。現在の利用資格には、「海外在住が10年以上で、その証明書を在外公館で取得したもの」とある。すなわち、海外に10年以上連続して住んでいても「在外公館がそれを証明できなければ利用資格を満たさない」という意味。海外在住日本人によるパス購入の要は、在外公館が発行する証明書類にある。

■「必要書類が分からなかった」これまでのパス交換

 ジャパン・レール・パスは「7日間」「14日間」「21日間」の3つの期間があり、さらに「普通車用」と「グリーン車用」に分かれて全6種類が用意されている。「のぞみ」と「みずほ」を除く新幹線と在来線の特急列車が利用でき、価格は7日間の普通車利用で2万9110円。日本人ならすぐ、「東京と新大阪を往復する新幹線の運賃並み」と計算してしまうだろう。みどりの窓口やきっぷうりばで指定券を無料で発券してもらえるので、全指定席の東北・北海道新幹線の「はやぶさ」などにも追加料金なしで乗れてしまう。ほか、JR各社が発行する各々の地域限定のパスもある ※1。

 外国人旅行者を対象とした周遊パスだが、利用資格を満たせば海外在住日本人も利用できる。今年3月末までは、

* 永住許可証を取得している、もしくは
* 日本国外に在住して外国人と結婚、その配偶者も日本国外に在住している

というのが利用資格だった。「海外に暮らす日本人が外国人と共に帰国しても、自分だけ通常運賃を払わなければならず、旅費的に負担がかかる」といった問題への対応であろうことは、容易に察することができる。もちろん、単なる里帰りや個人旅行にも使われる。むしろそちらの方が多いと思われる。著者もこれまで、ときに外国人と共に、ときに1人でジャパン・レール・パスを何度も利用。日本在住の日本人から、「同じ日本人で不公平」という批判が挙がることが多いが、海外に暮らす日本人が日本に一時帰国しても「非居住者」であり、外国人旅行者と同じ身分。また、世界にはさまざまな鉄道周遊パスがあるが、たいていは居住者・非居住者という分け方をするのみで、自国民を含め国籍で区別をしない。

 ジャパン・レール・パスは価格が魅力的であるがゆえ、「利用資格を満たしていないが何としても使いたい」という海外在住日本人が常にいて、窓口で証明書類を提出せずにゴリ押ししたり、いい加減な書類でごまかそうとしたりする事例がかなりあったようだ。バンコクを拠点とする日系旅行代理店の日本人責任者は、「そのような日本人の名が、パスを使った事件の容疑者のブラックリストに加えられている」と話していた。

 海外在住日本人がジャパン・レール・パスを購入する場合、まずは在住国など日本国外の旅行代理店で引換券を購入。本パスは日本入国後にJR窓口に出向いて交換となる。その際に利用資格を証明する書類を提出するが、そもそも正当な書類であってもJR職員が見て分からないという問題があった。永住許可証ひとつを取ってみても、国によってIDカードであったり冊子であったり、本当の意味での永住なのか実は有効期限が設定されているのかなど、不明な点はさまざま。和訳が添えられていても信ぴょう性を判断できない書類が多かったようだ。

 それでも20年も30年も昔は、その辺りの判断は結構緩やかで、一言二言のやり取りで引き換えてもらえることがほとんどだった。それが過去数年は、正式な書類を揃えて窓口を訪れても、あるときは「日本語の正式書類を確認する必要がある」、あるときは「海外在住なのだから現地の書類を提出すべき」などと言われ、首尾一貫しない対応に利用者側も苦りょした。

 バンコク在住のある日本人は一時帰国の際、タイ人配偶者と共に正式な書類を手にしてJR窓口を訪れたものの、30分以上も書類についていろいろ聞かれたという。「必要書類を明示してくれと迫っても『そういうわけではないのですが』というあいまいな言葉が繰り返された」と話していた。これは、パス引き換えが少なく職員の経験値も低い地方ではなく、外国人も日本人も利用者が多い首都圏の空港での事例だ。海外に住む日本人の間ではいつしか、「この書類を持っていったらスムーズだった」などと情報交換するようになっていた。

 そのような問題が延々と続き、国ごとに必要書類を指定するといった対策も取られず、やがて収集がつかなくなったのだろう。結局は今年3月末をもって引換券の販売終了という結末に至った(本パスとの交換は引換券発行日から3カ月以内)。JRからは「利用資格の証明にあたって不平等が発生した」という主旨の理由が対外的に発表された。

■「必要書類は明確になった」ものの……

 JRによるその決定は2カ月後にあっさりと撤回され、6月1日には引換券の販売が再開される。実際には個人利用がもっぱらと思われるが、「外国人旅行者のさらなる誘致や来るべき東京五輪での海外在住日本人の役割」を理由とした、抗議や懇願が相当あったらしい。その辺りの詳しい事情は日本のメディアで紹介されている ※2。また、前述の日系旅行代理店の日本人責任者は、「早い段階で再開を決めていて、仕切り直しで一旦終了したとも聞いている」という。海外にはさまざまな理由で日本人として生活していない日本語を話さない日本国籍保持者が多く存在。そのような人々への対応をおざなりにすることはできず、完全な打ち切りは考えられていなかっただろうと話す。

 現在の利用資格はいたって明確だ。JRウェブサイトには

* 日本国の旅券及び「在留期間が連続して10年以上であることを確認できる書類で、在外公館で取得したもの等」を有する方

と明記されている。海外在住10年以上という対象者は相当な人数になるはずだ。しかし販売が再開されて早々、今度は海外在住日本人から「JRは融通が効かない」という批判が挙がるようになってきた。

理由は「在外公館から必要書類を発行してもらえない」というものだ。JRは必要書類を以下のように示している。
A.日本大使館(領事部)が交付する「在留届の写し」(在留届の受付日付が10年以上前のものに限る)
B.日本大使館(領事部)が発行する「在留証明」(「現住所に住所(または居所)を定めた年月日」として、10年以上前の年月が記載されたもの)

 一見、すぐに出してもらえそうな書類だが、実はそうでもない。例えば在外公館のウェブサイトを確認しても「証明関係手続一覧」にAの「在留届の写し」という書類が見当たらない。おそらく記載されていないと思われる。著者は前回のパス引換券購入の際、とにかく領事館に出向き、そこではじめて無料で発行してくれることを知った。Bの「在留証明」はウェブサイトに記載されている。手数料は380バーツだ。

 どちらの書類も、在留届を届け出ていれば簡単に発行してくれると早合点しがちだ。実際、「在留届に記載されている現住所に10年以上住んでいる」のであれば、「現住所を証明する書類」さえ提示すればスムーズだろう。「現住所を証明する書類」というのは、在外公館のウェブサイトでは以下のように記載されている。

* 本人氏名と現住所が記載されているもの(原本及びコピー):ワークパーミット、タイの運転免許証、住宅賃貸(購入)契約書、公共料金請求書等

しかし一度でも引っ越したとなると、現住所のみならず旧住所を証明する公式書類も必要となってくる。過去10年に引っ越した分だけの住所の証明だ。そのような書類をどこまで残しているか、途端に不安になる。

 Bの「在留証明」は過去の住所履歴が全て必要だが、Aの「在留届の写し」は窓口の担当官が「在留届の記載内容が正しく、10年以上連続して在留している」と判断すれば、発行してくれそうな雰囲気だ。とはいえ、書類が不要になるわけではない。都市をまたぐ引っ越しだと在外公館が変わることもあり、余計に証明してもらいにくくなる。

 海外で生活を始めたら遅滞なく在留届を届け出る、引っ越しの際は在留届の記載事項のみならず、労働許可証や運転免許証の現住所も迅速に更新する、というまじめな海外生活が求められる。話の趣がまるで、日本の外務省が指導する「海外生活の心得」のようだが、そのぐらいでないとスムーズな発行に至らないのは事実だ。

 ジャパン・レール・パス絡みのSNSなどを閲覧していると、「在留届の写しも在留証明も入手できない。当該国の政府が在留を証明する書類を出してくれるのに、JRは『日本の在外公館からの書類のみ』と一点張りで融通が効かない」といった批判が書き込まれているのが目に付く。外国政府発行の書類に定形がなく確認が徹底されなかったのが、今回の利用資格の改定の理由である以上、在留届の写しもしくは在留証明しか受け付けないのは当然といえる。利用資格に「在外公館で取得したもの等」とわざわざ書かれているのもそのためだ。著者が新しい利用資格でジャパン・レール・パスを交換したときも、窓口の職員は手元にある在留届の写しのサンプルと著者が持参したその原本を見合わせながら、内容を厳密に確認していた。

 もとより、旅行代理店が引換券を販売する際に必要書類を確認する。JR窓口で押し問答したり引き換えてもらえなかったりという問題は今後、ほとんど発生しないと思っていたが、相変わらずのようだ。今度は、「在留届の写しもしくは在留証明」の原本は引換券を購入するときに旅行代理店に渡してしまったから持ってこなかった」「利用資格が変更になったのを知らなかった。告知が不十分」となどの理由だという。JR窓口で原本を要請するのは当然。旅行代理店も同様に原本を要請する場合、購入者は原本を2通、用意しなければならない。

■列車乗り過ぎに注意

 日本人がジャパン・レール・パスを使って旅行するとなると、お得であるがゆえに「徹底的に乗ってやろう」と思ってしまうことが多々ある。朝から夜まで1日中乗りっぱなし、目的地で散策する時間もなければホテルで寝る時間もわずか、といった強行旅程を組みやすくなる。個人旅行ならまだしも日本の旅を楽しみにしていた外国人を共にしてそのようなスケジュールだと、「電車に乗っているだけ」という失望のクレームを受けることになる。著者も同様、「タイ人に紹介する日本各地の名所を写真に収める」という大義名分を掲げ、そのような失敗を繰り返してきた。

 外国から日本に戻ってJRに乗り、まず実感するのは新幹線の速さだ。北海道から九州までその日のうちに行けてしまう。ダイヤも極めて正確。2分遅れただけで「ただいまこの列車は2分遅れで運行しております。お忙しいところご迷惑をおかけしてお詫び申し上げます」と車掌が車内放送を何回も繰り返す。そのため分単位での乗り継ぎを計画してしまう。

 しかし実際には、列車の遅れは多々ある。特に地方の単線だ。山奥を走る列車が動物とぶつかるという事故は珍しくなく、数十分停まってしまうこともある。たいていの列車は、乗り継ぎ客を見込んで数分の遅れは待ってくれるが、数十分だと待たずに出発してしまう。パスを使って1週間も列車に乗っていると、乗り遅れることが1―2回はある。

 東海道・山陽新幹線は「ひかり」「さくら」「こだま」への乗車が可能。これに乗り遅れると、「のぞみ」や「みずほ」には乗れないため、次に乗れる列車が来るまで1時間待つことになる。便利なパスだといって無理なスケジュールを組むと、1時間に何本もやってくるのぞみをやり過ごしながら、不便さを感じることになる。

 寝台列車の寝台券などは別途購入が必要なのは当然のことと理解するが、見落としがちなのが第三セクター、いわゆる私鉄だ。乗車してから車内放送で三セク区間を通過することを知る、ということがよくある。車掌が車内を回って切符を確認、パス利用者は該当する区間の運賃を別途払う。連れが外国人の場合はしっかり説明しなければならない。ほか、指定券の発券が無料なので、事前に何枚か取っておくようになる。しかし取った後で乗らなくなることもしばしば。そのときはなるべく返すようにしているが、事情に疎い外国人はそのまま捨てる、というのがほとんどのようだ。

 ジャパン・レール・パスの利用価値の高さを知る日本人であればこそ、再び販売終了にならないよう誠実な利用を心がけたい。

※1:ジャパン・レール・パス:http://japanrailpass.net/about_jrp.html
※2:一例:「東洋経済オンライン」ウェブサイト、JRパス「在外日本人は使用不可」撤回の舞台裏
《newsclip》


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