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インバウンド、いますぐおさえるべきポイントは何か?/インバウンド・観光ビジネス総合展

2017年10月10日(火) 11時06分(タイ時間)
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やまとごころ 代表取締役 兼 インバウンド戦略アドバイザー、村山慶輔氏
日本の将来を左右するインバウンドについてフィーチャーした展覧会「インバウンド・観光ビジネス総合展」。今後のインバウンドビジネスや地域創生プロジェクトに向けての課題や問題解決の手がかりが数多くプレゼンテーションされたの画像
日本の将来を左右するインバウンドについてフィーチャーした展覧会「インバウンド・観光ビジネス総合展」。今後のインバウンドビジネスや地域創生プロジェクトに向けての課題や問題解決の手がかりが数多くプレゼンテーションされた
【記事のポイント】
▼インバウンドマーケティングの原点である「外国人目線」を忘れないこと
▼インバウンドのトレンドは進化している。その流れを確実につかむこと
▼インバウンド客数ではなく、お金をいかに落としてもらうかに注力せよ

 観光ビジネスを支援する企業や団体が多数出展する世界最大級の旅行イベント「ツーリズムEXPOジャパン2017」が、2017年9月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された。

 今回、特筆されるのは、日本の将来を左右するインバウンドについてフィーチャーした展覧会「インバウンド・観光ビジネス総合展」が、「ツーリズムEXPOジャパン2017」内のフェアinフェアとして初開催(主催:ツーリズムEXPOジャパン、日本経済新聞社)されたことだ。

 HANJO HANJOでは、「インバウンド・観光ビジネス総合展」で何が語られたのかに注目し、複数のセミナーから重要なテーマやワードを抽出。今後のインバウンドビジネスや地域創生プロジェクトに向けての課題や問題解決の手がかりとなるような特集を構成する。

 第一回目は9月21日に行われたセミナー『2020年に向けて!インバウンド最新動向からみる今後の課題』~講師:やまとごころ代表取締役 兼 インバウンド戦略アドバイザー 村山慶輔氏~(やまとごころはインバウンド観光に特化したBtoBサイト「やまとごころ.jp」を運営)より、日本のインバウンドの現状と企業や自治体が今後進むべき方向についてのリポートをお届けする。


■インバウンドの原点「外国人目線」を忘れるな

 まず初めに村山氏は7月に香港で開催された「香港ブックフェア」を紹介し、そこで行われた「アニメツーリズム」のPRについて説明した。「アニメツーリズム」とは日本製アニメや漫画のファンが、作品の舞台となった土地を訪れる旅行のこと。8月には一般社団法人アニメツーリズム協会により「アニメ聖地88ヶ所」が決定されるなど、アニメをテーマに“巡礼”という形で日本広域をつなぐことで、インバウンドの効果を得ることを目的としている。

 それに関連してインドネシア人が日本を訪れたときに食べたいものとして、寿司・天ぷらに続いてどら焼きが人気であることを紹介。この例も日本の国民的アニメの影響が強く表れている事例だと言えるだろう。

「外国人目線になることがインバウンドマーケティングの原点である」と村山氏は強調し、実際に海外に足を運ぶこと、外国人にヒアリングすることの重要性を説いた。

 そもそもインバウンドの現状はどうなっているのか。訪日外国人は2016年に2400万人を達成し、2017年も8月時点で2000万人を超えている。訪日外国人は右肩上がりに上昇、そのうち80%がアジア圏からの訪日である。

 今後の見通しとして政府が掲げる目標は「2020年に訪日外国人数4000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円」。さらに2030年には訪日外国人数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円という次の目標も立てている。この数値について村山氏は2020年の4000万人は2016年の2倍にも満たないが、旅行消費額は2016年の3.7兆円に比べ2倍以上となっているということに注目。この金額を達成するためには訪日外国人一人あたりの消費単価を上げていく必要があると強調した。

 その施策の一つとして挙げられたのが「ナイトエンターテイメント」。青森県八戸市の朝市、横丁の事例(朝は早起きして朝市を楽しみ、夜は横丁で郷土の味や地酒を楽しむ)を挙げ、早朝や夜の消費を増やすと同時に、宿泊への誘導を狙うことで消費単価を上げることへの重要性を語った。

「世界的に海外旅行者が増えるという状況を踏まえ、東京オリンピック後も訪日外国人は安定して伸びる見通しである」(村山氏)。つまりこの先のインバウンドは「爆買い」のようなバブルではなくトレンドになることが期待できるのだ。



■インバウンド、今知っておくべき4つの変化

 次に村山氏は最近のインバウンドに見られる4つの変化を説明した(以下は内容の要約)。

 一つ目は「団体旅行の変化」。

 これまでは団体でゴールデンルート(日本の主要観光都市を周る観光周遊ルート)を周る訪日外国人が多かったが、京都・広島・松山を巡る「新ゴールデンルート」、中部・北陸を巡る「ドラゴンルート」、福島・栃木・茨城・東京を結ぶ「ダイヤモンドルート」など、リピーターをターゲットにした新たな流れも生まれ、団体旅行のルートも多様化している。

 また特に顕著なのが「個人旅行へのシフト」。
 中国においても2010年には20%だった個人旅行者が2016年には60%に増加していることから、個人旅行がトレンドになりつつあることがうかがえる。

 このことから、これまでのように団体客に依存している施設はすでに危険な状態に入っており、個人客のリピーターを増やす工夫が求められることが理解できる。また、個人観光客はスマートフォンを活用して自分で情報収集するため、積極的な情報発信や言語対応などが必要となるだろう。

 二つ目が「都市部から地方へのシフト」。

 観光庁が発表した都市別訪問率によると、2017年の第1四半期において徳島県が314.3%、熊本県が301.6%と前年を300%超える伸び率を示している。観光産業よりも大手企業の研究所や工場のイメージが強い徳島県だが、アレックス・カー氏(東洋文化研究者で古民家再生の第一人者であるアメリカ人)の著書『Lost Japan』(1996)で徳島県三好市が紹介された辺りから人気が高まっており、中でも祖谷(いや)はレンタカーでしか行けないような限界集落にも関わらず、古民家をリノベーションした宿泊施設や大歩危(おおぼけ)、かずら橋などのスポットに多くの外国人観光客が訪れている。

 三つ目が「欧州勢の存在感の高まり」。

 訪日外国客の8割がアジア圏からの観光客だが、これからは欧州勢へのアプローチが重要になるという。2017年第1四半期における訪日外国人の一人あたりの消費額を見ると、イギリス・イタリアが中国を抑えたというデータが発表されている。消費内訳を見るとイギリス人は宿泊が50%を占めているのに対し、中国人は買い物がメイン。イギリス人の滞在日数は2週間前後と中国人の2倍近くあり、滞在日数の長さが消費額の大きさにつながることが分かる。

 特に2019年は日本でラグビーワールドカップが開催されるため、参加国であるヨーロッパ・オセアニアからの訪日外国人増加が期待できる。ラグビーワールドカップの開催日数は44日間と長く(オリンピックは2週間ほど)、開催エリアも日本全国12ヶ所に及ぶ(オリンピックは首都圏のみ)。またラグビーファンには富裕層が多いことから消費が期待されるため、キャンプ地には90もの自治体が手を挙げている。

 四つ目が「モノからコトへ」。

 最近は島暮らしの体験メニューと民泊、九州オルレ(韓国・済州島発トレッキングの九州版)に代表されるトレッキング、しまなみ海道やビワイチ(琵琶湖一周)といったサイクリング、四国のお遍路、果物狩りなどのアクティビティが人気となっている。

 体験アクティビティの販売サイトも好調であり、“コト消費“に対するニーズは高まっているので発信次第で呼び込むことが期待できる。ただし“コト”だけでは落ちる金額は限定されてしまう。そこで体験に付随する“モノ“を買ってもらう、あるいは滞在日数が増えるような体験をフックに呼び込み、“モノ消費”につなげることが必要となる。



■「ダメなインバウンド」5つの理由

 このようにインバウンドを取り巻く環境は変化し続けており、企業や自治体はそれに合わせた施策を行う必要があると言える。そこで村山氏は「ダメなインバウンドの取り組み例」を5つ挙げた。

 一つ目は「日本人だけで考える」こと。

 外国人にとって何が面白いかということは外国人目線を持たないと分からない。在日外国人や留学生、海外のインフルエンサーを巻き込み、外国人に外国人を呼んでもらうという流れを作る必要がある。

 二つ目は「ビジョン・戦略がない」こと。

 地域として、あるいは企業としてどうありたいかを明確に考える必要がある。例えばあるビジネスホテルでは日本人の宿泊客を確保するために外国人宿泊客を3割までに制限している。自分の地域・企業はどういう人を呼びたいのか戦略を立てることができれば、狙う市場や切り口次第でナンバーワンをとることも可能だ。

 三つ目は「とにかく地名を売りたがる」こと。自分の地域が必ずしも外国人にとってメジャーとは限らない。例えば神奈川県は東京の観光情報サイトに箱根などの観光地情報を載せている。また城崎温泉(兵庫県)は「京都から2.5時間で行ける」というフレーズでアピールしている。このようにメジャーな地名に便乗して自分の地域を知ってもらう「コバンザメ商法」をうまく使うことが必要となる。

 四つ目は「プロダクトがない」こと。

 魅力的なコンテンツばかり用意しても、実際に売るべき商品がなければお金は落ちてこない。コンテンツの前にプロダクトを作ることを念頭に置かなくてはならない。

 五つ目は「平等・公平・大手・権威が好き」。

 日本の大手企業が海外でも大手とは限らない。権威に引きずられることなく、自分の売りやすいところを優先的に売っていくことを考える必要がある。

 最後に村山氏は「提供・受け入れ側目線からの脱却」「一滞在をデザインする」「人材の確保と育成」の3つを今後の課題として挙げ、「インバウンドは国際的な観光客争奪戦。日本国内の地域で争わず、まずは日本という国を選んでもらうことが必要」と結んだ。
《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》


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