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【川崎大輔の流通大陸】中小企業が勝ち残る、カンボジア自動車アフターマーケット

2018年2月19日(月) 08時29分(タイ時間)
カンボジアスタッフの画像
カンボジアスタッフ
《撮影 川崎大輔》
ポリ製品カバーの画像
ポリ製品カバー
《撮影 川崎大輔》
スリーブ、キャップの画像
スリーブ、キャップ
《撮影 川崎大輔》
カンボジアの大型中古車ディーラーの画像
カンボジアの大型中古車ディーラー
《撮影 川崎大輔》
中古車輸入業者の競売(カンボジア)の画像
中古車輸入業者の競売(カンボジア)
《撮影 川崎大輔》
一般中古車ディーラー(カンボジア)の画像
一般中古車ディーラー(カンボジア)
《撮影 川崎大輔》
新車ディーラーの画像
新車ディーラー
《撮影 川崎大輔》
自動車アフタービジネスの日系中小企業がカンボジア市場に期待をよせる。日本のバランスウェイトメーカーである(株)マルエムもその1つだ。代表の巖谷(いわや)氏にカンボジアでの販路拡大の魅力をきいた。


◆カンボジアで自動車アフタービジネスを行う魅力

カンボジアでビジネスを行う魅力は、「どんな市場であっても1番になることが重要。カンボジアには中小企業であってもその可能性があるというのが魅力」と巖谷氏は言う確かに、人口が1400万人ほどと市場規模が小さいことは否定できない。それゆえに、大企業が進出をしづらい市場だ。中小企業は大企業との競争を避けることができる。

一方でカンボジアはプノンペンに限ってみると1人あたりGDPが4000ドルを超え、モータリゼーション期に突入。一般的に1人あたりGDPが3000ドルを超えると、その国での自動車普及期のモータリゼーションが始まると言われている。

カンボジアの首都プノンペンを車で走るとわかるが、バイクに乗った若者がたくさんいて街中活気で溢れている。これからのカンボジアの経済成長に伴い若い世代の所得が増加するだろう。車に興味がある若い中間層が増え、2輪バイクから自動車への乗り換え層をねらえる可能性がある。また、自動車の普及台数が増加するにつれて自動車アフターマーケットの需要も高まっていくことは間違いない。そういう意味で、先陣を切ってカンボジアに進出した企業はブランド構築がやりやすい。自らが自動車アフターマーケットの伝道師となることで、カンボジア市場でのパイオニアとなることができるためだ。

「カンボジアでの要望を真っ先に知って、1から商品やサービスをつくっていける。価格はどうであれ、日本製品に対してはすごく興味を持ってもらえる。カンボジアでのビジネスは損得勘定なしに楽しい」(巖谷氏)。


◆カンボジア市場は9割が中古車

2015年のカンボジアの新車販売台数は約6460台、カンボジアでの新車、中古車を合わせた年間の自動車販売台数は約5万6000台。そのうち9割の5万台が輸入された中古車だ。カンボジアは、中古車の規制がないため中古車比率が高い、歪(いびつ)な自動車市場となっている。

特徴的なのは、約8割の中古車がアメリカから輸入される事故車だ。更にアメリカから輸入される多くは左ハンドルの日本車メーカー。カンボジアの右ハンドル規制のためだ。他(ほか)の国で使われなくなった自動車、アメリカでの事故車やすごい走行距離を走り自国で販売できないような車がカンボジアに入ってきている。

そのような市場にも関わらず、アフターマーケットがまだ整備されていない。もちろん昔に比べて綺麗(きれい)な整備工場などはジワジワと増えてきているが、まだ道路脇(わ気)にある小さなパパママショップがメインとなっている市場だ。


◆マルエムのカンボジアビジネス

カンボジア拠点の展開を開始したのは2017年、現在はトライアル販売のステージだ。カンボジア人2名体制で、代理店契約からのカンボジアでの販路拡大を目指している。バランスウェイト、工具(ウェイトカッター、エアゲージなど)、チューブレスバルブ、ポリ製品(フロアシート、シートカバー、ステアリングカバーなど)の現地販売をスタートした。

「自らカンボジアに出ることで、カンボジアの特性を考慮しながら、現地にあった商品をつくっていけることは我々の強みだ。例えば、ポリ製品などサイズを変えたいとの要望に対応できる。迅速なトラブル対応も可能となる」(巖谷氏)。更に「日系企業という信頼はもちろんあるが、それ以上に現地に出て行って、その人が欲しいものをきき、調査しているのは大きな差別化だ」と語る。

バランスウェイトの現地需要はまだ少ないため、当面はポリ製品、チューブレスバルブなどのアクセサリー用パーツの販売を行う。そこから、マルエムブランドをカンボジア市場につくり、その後バランスウェイトの市場展開を考えている。


◆自動車アフターマーケットは夜明け前

自由な中古車輸入、実行されない車検制度、技術のないメカニック。更に未整備の道路インフラと乏しい交通ルール、公共交通機関の不足による市内の渋滞。カンボジアはまだ多くの課題を抱えている。マルエムのカンボジアビジネスも、現在の取扱量だけではまだ難しく、売り先をどのように広げていくか。更に、現地の優秀な人材をどのように確保していくのか、という課題も残っている。

しかし、カンボジアの消費者は、優良な商品、そしてサービスを求める土台が少しずつできつつある。中間所得層の増加に伴い、新古車の販売は昨年比約10%増加した。地方を含む市場の伸びも期待されている。自動車市場が拡大することで、修理・メンテ、部品販売、オートローンなどの自動車アフターマーケットは拡大していくことになる。「本当にGDPが上がって車の購入できる層が出てきたら一瞬にして市場は拡大しそうな雰囲気を感じている」(巖谷氏)。

政治も安定し経済成長が今後も続くと考えられるカンボジア。2018年7月の国政選挙の方向性については常に情報を得ておく必要があるが、カンボジアの国自体が長期ビジネスに投資をしてきておりカンボジア経済、自動車市場にとってはプラスの要因だ。カンボジアの自動車アフターマーケットの夜明けは近い。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔@レスポンス》