2018年2月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された『インバウンドマーケットEXPO2018』では、訪日外国人対応の強化や地方創生の支援に関わる106社による製品・サービスが集結。またインバウンド対応に関する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われた。
今回は『インバウンドと地方創生~富士河口湖町の未来に向けて~』から。訪日外国人は増加しているが、それは一部の大都市圏に限定されており、地方の観光地は客の奪い合いの中で数字を落としている。しかし富士山観光で有名な富士火口湖町では、様々な施策を行なってその状況を変えてきた。
その先頭に立って「観光によるまちおこし」を行ってきたのが、富士河口湖町観光連盟・代表理事の山下茂氏だ。今、地方の観光地が考えなければいけないことは何なのか? 事例とともに語ったのは、地方観光を支えようという強い信念だった。
■日本一利益率の高い観光連盟を抱える富士河口湖町の現状
はじめに山下氏より富士河口湖町の現状について説明があった。富士河口湖町では観光連盟を36年間、町長が担っていたが、民営化の必要があると判断して2016年6月に法人化。イベントの広告に力を入れるなど、これまでのやり方を一新したところ、2016年には1700万円の余剰金が出たという。このうち700万円を施設の移転などに使い、残りの1000万円は町に返還するため設備投資として使ったそうだ。2017年には3000万円の利益を見込んでおり、今では富士河口湖町観光連盟は日本一利益率の高い観光連盟になった。
富士河口湖町への外国人観光客、特に中国からの団体客は減少傾向にあり、その対策としてFAMツアー(旅行事業者を対象に誘客促進のために行う現地視察ツアー)の実施や、海外への誘客セールスのほか、地域振興や新しい観光資源の発掘も積極的に行っている。
「一度落ちたら上がれないのが観光業ですが、逆に言えば落とさなければ良いのです」と山下氏は話す。
■行政からのトップダウンではまちは蘇らない
河口湖町は地域振興のために具体的に何をしているのだろうか。町の発展に市民の参加が必要と考え「まちおこし隊」を設立、新しい観光資源の発掘に取り組んでいる。ここで注目したいのは県や市町村といった行政からの指示でやるのではなく、市民主動でやること、つまりトップダウンからボトムアップへのシフトチェンジを行っているということだ。「行政任せにせず、自分から動くことが地域振興には大切なのです」と山下氏は語る。
また富士山のロープウェイの代わりに鉄道を敷き、冬でも富士山観光ができるような企画の立案、富士山に隣接する市や静岡県との連携といった、富士山を軸にした観光誘致ほか、山梨の特産である果物に着目し、甲府市・笛吹市・甲州市・山梨市の観光協会と連携した「富士山フルーツ観光推進協議会」を設立。各市町村の果物や名物・名所を取り上げ広域的な地域振興を手がけるなど、富士山だけに頼らない観光資源の発掘にも積極的に取り組んでいる。
「地域振興はいかに地元の人の協力を得ることができるかが重要となります」と山下氏は強調する。
■地方の観光地ではシニア世代の誘致が重要になってくる
今後の取り組みとして山下氏は、まず旅館の予約サイトである「やまなしナビ(仮称)」の開設を目指している。これは大手の予約サイトでは取り上げられることの少ない小規模旅館に特化した予約サイト。まずは山梨県からはじめ、いずれは日本全国にまで広げていきたいと考えているそうだ。
河口湖町を訪れる観光客について「日本全国で多くの地域がインバウンドの誘致をしているため、河口湖町を訪れる外国人は減っています。しかし日本人の高齢化に伴いシニア世代の国内旅行が増えると考えています」と観光客がV字型に増加することを予測。そこで行政と一体となり、高齢者に対する優しいまちづくりの促進に取り組んでいるのだ。外国人観光客だけでなく、高齢者が観光に訪れやすいまちづくりに配慮するというのは各地域における今後の課題といえそうだ。
最後に山下氏はある種の決意表明として次のような言葉を残した。
「私もこれまでいろいろなことをやってきて、いろいろなことを言われてきました。しかし何かをやると決めたのであれば、悪口や陰口を言われることを怖れずに真剣に取り組まなくてはなりません。身を捨てないと改革をおこすことはできないのです」
国内観光はシニア世代誘致が重要になる(富士河口湖町)/インバウンドマーケットEXPO
2018年3月9日(金) 11時44分(タイ時間)
《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》
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