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海外富裕層の受け入れ体制とベジ対応が急務/インバウンドマーケットEXPO

2018年3月30日(金) 15時32分(タイ時間)
2018年2月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された『インバウンドマーケットEXPO2018』。訪日外国人対応の強化や地方創生の支援に関わる106社による製品・サービスが集結。インバウンド対応に関する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われたの画像
2018年2月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された『インバウンドマーケットEXPO2018』。訪日外国人対応の強化や地方創生の支援に関わる106社による製品・サービスが集結。インバウンド対応に関する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われた
株式会社ANA総合研究所 取締役副社長 稲岡研士氏の画像
株式会社ANA総合研究所 取締役副社長 稲岡研士氏
地域ブランディング研究所 代表取締役社長 吉田博詞氏の画像
地域ブランディング研究所 代表取締役社長 吉田博詞氏
菜食食品開発 Good Veggie Family Inc. 代表取締役社長 木村 重一氏の画像
菜食食品開発 Good Veggie Family Inc. 代表取締役社長 木村 重一氏
日本インバウンド連合会 理事長 中村好明氏の画像
日本インバウンド連合会 理事長 中村好明氏
 2018年2月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された『インバウンドマーケットEXPO2018』では、訪日外国人対応の強化や地方創生の支援に関わる106社による製品・サービスが集結。またインバウンド対応に関する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われた。

 今回は『インバウンド×食~訪日リピーター客獲得のための"食"戦略とは~』から。2019年のラグビーワールドカップ、そして2020年の東京オリンピックに訪れる多数の訪日外国人。彼らの多様な食文化(ベジタリアンやハラルフードなど)への理解とその対応は、これからのインバウンド対応として大きな課題だと言えるだろう。

 ディスカッションでは、株式会社ANA総合研究所 取締役副社長 稲岡研士氏、地域ブランディング研究所 代表取締役社長 吉田博詞氏、菜食食品開発 Good Veggie Family Inc. 代表取締役社長 木村 重一氏の3名に加え、ファシリテーターとして日本インバウンド連合会 理事長 中村好明氏が登壇、インバウンドにおける重要テーマである「食」について語り合った。

■日本は海外富裕層を受け入れる体制ができていない

 まず政府は海外富裕層を受け入れるとき、マーケットはどれくらい広がるかという質問に、稲岡氏は「海外には1年間に1億円を旅行に使う超富裕層が10万人いると言われていますが、彼らは日本にほとんど来ていません。これは日本に富裕層を受け入れる体制ができていないからです」と話す。例えばアメリカには755軒、イギリスには129軒の5つ星ホテルがあるが、日本には28軒しかない。またプライベートジェットを受け入れることができる施設についても外国に比べると日本は圧倒的に少ない。これでは海外富裕層を受け入れることができないのだという。

 「5つ星ホテルのような頂点を増やすことができれば、自然と裾野も広がります。これがインバウンド4000万人、6000万人につながります」と稲岡氏は強調した。

 また海外富裕層について、吉田氏はオーストラリア・シドニーのプレミアム体験ツアーを例に挙げた。シドニーでは高さ134メートルのハーバーブリッジに登るという体験が人気だという。これは2時間2万5000円程度で売られているツアーだが、内容は命綱をつけて橋桁を渡るというだけのものだ。しかし橋の頂上でオペラハウスをバックに写真を撮る、記念品をもらうといった「一生に一度の誰かに自慢できる体験」に人は喜んでお金を払っている。

 日本人が海外へ行くとお金を払ってワンデーツアーに参加するのは当たり前のことだが、いざ日本国内で売る側に回ると「こんなものでお金をもらうのは気が引ける」と後ろ向きな考えが多く見られる。「お金を払って体験したいと思っている人は多いのに、日本側が体験できる環境を提供していない。ここに大きなギャップがあります。ここを改善すべきです」と吉田氏は話す。

■2020年に向けベジ対応は必須

 続いてベジタリアン対応について、木村氏は「メニューを選ぶことに関しては多くの人が保守的になり、自分の知っているものしか選びません。知っているメニュー、例えばハンバーグやカツ、寿司などで肉や魚を使わないものを作るという考えが必要になります」と説明。

 木村氏の会社では大豆でハムを作っているが、このハムを調理することでブリの照焼やタンドリーチキン、焼鮭などの料理を作りだすことができるのだという。見た目も味も本物に近く、これならベジタリアンでもいろいろな料理を楽しむことができそうだ。「肉や魚を使わない料理を体験してもらうことで、そこにストーリーが生まれます。この体験を共有しようとお客様がお客様を連れてくるという良いサイクルもできます」と木村氏は話す。

 しかし日本ではこれまであまりベジタリアンについて認識してこなかったという背景がある。2019年のラグビーワールドカップでは海外富裕層40万人(うち30%がベジタリアン)が日本に長期滞在すると言われているが、このことについて木村氏は「ベジタリアン料理は通常の料理よりもコストがかかります。いろいろな業者と話をしましたが、安さと便利さを求めている人が多く、少し価格が上がるだけで高いと思われてしまう。しかしベジタリアンやハラルフードの人は増えていますので、ホテルや飲食店の対応は避けられないでしょう」と注意を促した。

■今後日本が取るべきインバウンド対応

 今後日本が取るべきインバウンド対応として、稲岡氏は料理の専門大学を設立する必要があると考えているそうだ。「世界的に観光産業はGDPの9%を占めていますが、日本はものづくりが先行していて観光を産業として見ていない傾向があります。そのため、海外のように料理やホテルの学校という文化が育たず、人材の育成が大きく遅れています。政府は日本に4000万人を来させるということを優先していて、日本の加工産業を育成するという視点がありません。ここを後押しすることができればと思います」と話した。

 また吉田氏は「海外で日本食は非常に高価です。例えばラーメン1杯が日本の2倍以上の価格で売られていますが、海外ではおいしいもの、プレミアムなものとして受け入れられています。自分たちが持っているものを当たり前のものとせず、世界のトレンドに合わせて見ることができれば、それは大きなビジネスチャンスになります」と発想を転換する必要性を説いた。

 ベジタリアン対応については木村氏は「ベジは"おいしい、おしゃれ、ヘルシー"と、一昔前とは認識が変わってきています。時代は変化しているので、怖れずに研究をすることが必要です」とまとめた。

 最後にまとめとして中村氏は「日本の物価は欧米豪から見ると信じられないくらい安い。アジアから見ても割安です。これは貨幣感覚がお得すぎる国になっているということです。汗水垂らして少しの利益を得ることも大切ですが、もっと大胆にインバウンドに打って出るべきではないでしょうか」と締めくくった。
《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》


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