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【川崎大輔の流通大陸】最新鋭の設備、ミャンマーの日系整備工場

2018年5月8日(火) 04時30分(タイ時間)
大型の日系整備工場の画像
大型の日系整備工場
《撮影 川崎大輔》
整備中の車両の画像
整備中の車両
《撮影 川崎大輔》
整備状況が見える待合室の画像
整備状況が見える待合室
《撮影 川崎大輔》
HTSの画像
HTS
《撮影 川崎大輔》
他ではあまり見ない設備の画像
他ではあまり見ない設備
《撮影 川崎大輔》
新しい設備の画像
新しい設備
《撮影 川崎大輔》
工場内の画像
工場内
《撮影 川崎大輔》
ミャンマーの首都ヤンゴンで日本と変わらぬ最新鋭の設備を導入している日系の整備会社HTS Myanmar Co.,Ltd(HTS)。日本人整備士の山王(さんおう)氏にミャンマー整備ビジネスの現状について話を聞いた。


◆ ミャンマーの日系整備会社 HTS Myanmar Co., Ltd(HTS)

クラクションの音とごった返す車を数センチの幅でかわして走る大量のタクシー。ミャンマーを初めて訪問した人は朝夕の市内における渋滞度合いに驚くだろう。しかも、ほとんどが日本車である。ミャンマーを走る自動車の90%近くが日本からの中古輸入車である。

そんな日本からの中古車が溢れ、経済成長めまぐるしいヤンゴン。2016年5月にHTSは進出した。サービス内容は自動車の整備全般だ。現在、16名のメカニックがいる。更に国家1級整備士である日本人の山王氏を常駐させ、ミャンマー人メカニックのトレーナーとしてハイクオリティな整備教育を行っている。

整備のストールは全部で8ストール(内リフト付き6ストール)ある。アライメント専用のストールもある。年間で5,000台ほどの入庫があり7割がトヨタ車だ。また、外資系整備工場では唯一と言われるMIC(ミャンマー投資局)でのライセンスを保持し、自動車部品の輸入なども直接できる権利を保有する。

◆ミャンマーの整備ビジネスの現状

ミャンマーでは整備工場が1000以上あると言われているが実態は不明だ。しかし、整備に関する教育がなされていないため、しっかりした整備ができる整備工場は数える程。更に整備工場の建物をもっているところはまだ良いが、小さなプレハブのパパママショップ、若しくはプレハブもない道端整備が圧倒的に多い。車齢が高く、故障比率も高い中古車が中心であるにもかかわらず、正しいメンテナンスができていない。山王氏は「“安かろう悪かろう”の顧客が主流で、安い部品での修理が当たり前の市場です。そのため、どんなに品質が良いと言っても理解してもらえない部分もあるのがミャンマーの現状です」と指摘する。

◆ “HTS”という名前自体が差別化

「まさに、HTS(High Technical Service)という名前が差別化です」(山王氏)。つまり、高度な修理にも対応していける技術レベルをもつ整備工場ということだ。特に教育には力を入れている。9割近くは地元の整備専門学校を卒業したばかりで、まだ整備工場で働いたことがない真っ白な状態で入社をしてもらう。その上で、常駐している1級整備士の日本人から直接教育を受ける。

日本と変わらない最新鋭の設備を導入した最先端イメージの大型整備工場、日本ブランドを前面に打ち出した信頼感、更に日本人による直接指導を受けた技術レベルの高いミャンマーメカニックによる技術提供によって、周りの整備工場と圧倒的差別化をはかっている。


◆ 教育体制の不足は大きな課題

現時点ではミャンマーにおける課題として、(1)教育体制、(2)低い工賃、(3)安全性の欠如があげられる。教育体制という点では、多くの日本車を街中で見かけるにも関わらず日本人が自動車整備に全く関(かか)わっていない。整備学校も少なく、日本人の整備士による技術・安全指導もできていない。きちんとした教育が提供できていないことが自動車に関する安全意識が低いことにもつながっていく。低い工賃という点では、「作業工賃が低すぎてメカニックの品質・技術を高めることが難しいのが現状です」(山王氏)。良い車に乗っていても、パパママで修理をする人が多い。整備意識が浸透していないのが実情だ。これは安全性の欠如にもつながることで、ミャンマーでは定期点検という考え方がまだ普及しておらず、壊れてから直すというのが一般的である。

◆ミャンマーで整備ビジネスを行う魅力

山王氏は、大きな魅力の1つにミャンマー人メカニックの成長スピードの早さを指摘する。「日本の新人より3倍以上のスピードで教えています。車を触れば触るほど伸びていく。日本人が現場にきて現場で教えていくと技術の伸び率がすごい。しっかりしたことを教えてあげると吸収力が高いです」(山王氏)。更に「教えがいがあります。ある意味貪欲です」と指摘する。また市場の大きさも1つのミャンマー整備ビジネスの魅力となるだろう。2017年のミャンマー自動車登録台数は77万台。ヤンゴンだけで2/3ほど、つまり50万台ほどを占める。90%が日本車とすると、45万台というポテンシャルの整備台数があることになる。

HTSは2号店の展開、また鈑金(ばんきん)塗装のビジネスへの広がりを考えている。最近の流れで、ミャンマーでも保険加入が増えて来ている。渋滞や事故率が高い中で鈑金塗装の需要も増えていく。

ミャンマーは自動車政策が不安定で課題は山積みしている。しかしながら需要が段階的に新車に移る自動車市場の転換点を迎えている。変化が起きている市場には常に新しいビジネスチャンスが生まれる。整備事業の市場の拡大、そして新しい可能性の広がりが存在していることは間違いない。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔@レスポンス》

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