◆増益4社、減益3社で利益率は8ポイントの開きに
乗用車7社の2019年3月期の第1四半期(4~6月期)決算は増益が4社、減益が3社となり、近年になく企業間格差が広がる結果となった。それぞれが抱える課題への取り組みに伴う費用負担や、特定のマーケットでの好不調が個々の業績に色濃く反映された。減益でのスタートとなった3社は、来期以降の業績回復に向け、第2四半期以降が建て直しの正念場となっている。
7社の第1四半期の連結営業利益は表に示すように、トヨタ自動車、ホンダ、スズキ、三菱自動車工業の4社がいずれも2ケタ増益となった。逆に日産自動車、マツダ、SUBARU(スバル)の3社は2ケタ減益に落ち込んだ。第1四半期の営業利益としては、ホンダ(2014年3月期の新会計基準以降)とスズキが過去最高となった。また、収益力の指標である売上高営業利益率には業績格差が如実に示されている。トップのスズキが11.8%、最も低いマツダは3.8%と8ポイントもの開きが出た。
●自動車7社の第1四半期業績(単位=億円、%)
企 業 営業利益 営業利益率(前年同期)
トヨタ 6826(19) 9.3(8.1)
ホンダ 2993(11) 7.4(7.3)
日産 1091(▲29) 4.0(5.6)
スズキ 1165(37) 11.8(9.8)
マツダ 331(▲17) 3.8(5.0)
スバル 576(▲52) 8.1(14.7)
三菱 281(36) 5.0(4.7)
※カッコ内は増減率および利益率、▲はマイナス
◆インドで確実に収益を刈り取るスズキ
前期(18年3月期)まで3期連続で営業利益および純利益の最高を更新し続けているスズキの営業利益率は7社で唯一2ケタに乗せ、スバルを抜いてトップに躍り出た。原動力は乗用車シェアで半数近くを占めるインドでの躍進だ。第1四半期でのインドでの四輪車販売は前年同期を26%上回る46万4000台と過去最高だった。マーケット自体も最高が続くなかで、トップメーカーとしてパイの広がりを確実に収益への刈り取りへとつなげている。
スズキに次いで営業利益率が9.3%となったトヨタは、主力の北米での販売を前年同期比3%増としたほか、アジアもASEAN各国や中国が好調で9%の伸びを確保した。原価改善や営業努力、さら諸経費の低減による「収益構造」の改善が1200億円にのぼり、為替変動の影響も軽微だったことから2ケタ増益につながった。
営業利益が第1四半期として最高だったホンダも利益率は7.4%と、わずかだが前年同期から改善した。四輪車の主力市場である米国で過去最高レベルの販売となった一方、最大市場であるインドを中心とした二輪車販売も最高が続いており、業績改善につながった。第1四半期の二輪の営業利益率は16.6%と、四輪の5.3%を大きく上回っており、貢献度の高さを示している。
◆スバルなど減益3社は米国の建て直しが今期の急務に
営業利益率が前年のトップから3番手に後退したスバルは8.1%と低くはないものの、前年の14.7%から急降下した。連結販売台数(卸売り)は12%減と、前年同期の過去最高から一転して2ケタのマイナスとなり、営業利益はほぼ半減した。グローバルの最量販モデルである『フォレスター』がモデル切り替えとなったため、連結販売台数が落ち込んだのが主因だ。米国では金利上昇などを背景にインセンティブ(販売奨励金)も膨らんでおり、第1四半期では59億円の営業減益要因になった。ただ、第1四半期の苦戦は織り込み済みとし、通期の利益計画に対しては「オンラインにある」(岡田稔明専務執行役員)という。
一方、営業利益率が低位にある日産(4.0%)とマツダ(3.8%)は、ともに米国での販売体制の再構築という共通課題に取り組んでいる。日産は在庫やインセンティブの圧縮など「販売正常化」を進めており、第1四半期の米国販売は10%の落ち込みとなった。しかし、販売競争に巻き込まれてインセンティブの削減は思うように進んでいない。主力モデルが刷新される下期以降に「収益の改善、インセンティブの減少を図る」(田川丈二常務執行役員)構えだ。
マツダの米国事業の課題は、主に「販売ネットワーク改革」で、ディーラーの入れ替えや店舗投資などを進めている。第1四半期の米国販売は新モデル効果もあって10%の伸びを確保した。だが、ネットワーク改革への投資に加え、インセンティブなど販売費用が膨らみ、米国の販売増が全社の収益改善にはつながっていない。スバルを含む減益3社は、いずれも米国事業の立て直しが今期での急務となっている。
【池原照雄の単眼複眼】格差広がった乗用車7社の第1四半期…営業利益率は2ケタ乗せのスズキがトップに
2018年8月8日(水) 10時04分(タイ時間)
《池原照雄@レスポンス》
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