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「タイ在留邦人の危機管理」FILE No. 3:一歩下がって付き合う同胞 3 戸島国雄

2018年10月12日(金) 13時01分(タイ時間)
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「タイ在留邦人の危機管理」FILE No. 3:一歩下がって付き合う同胞 3 戸島国雄
――  詰めの甘い日本人、いろいろな被害の遭い方 ――

 海外に住む日本人は同胞に対してすぐ、家族や親類のごとく気を許してしまう。同胞であっても他人であることには違いない。日本人はいたって詰めが甘い。在タイ日本人から常に、「騙された」という相談を受ける。得体の知れない個人ならまだしも、法人組織に騙される事例が多いことに驚かされる。

 よく聞くところで、不動産購入の際のトラブルがある。「コンドミニアム(分譲マンション)を購入するため、仲介を名乗り出た日本人に数千万円を渡したら、そのまま持っていかれた」といったような話は珍しくもない。それらしい名刺を渡されただけで相手を信用する。日本人は名刺の肩書きに非常に弱いのだ。そして書類も精査しないままサインしてしまう。

 法人組織同士の場合、あくまでもビジネスで犯罪とはなりえない手口が利用されるので、より質が悪い。注意すべきはやはり、前回も取り上げたコンサルティング会社だ。職業柄、会社の値踏みは得意だ。社名を聞き、会社登記簿を取り寄せ、事務所の派手さを吟味し、売上額を調べて、「この客からいくら巻き上げることができるか」を皮算用する。相談を持ち込む会社は何かしらの問題を抱えてすがってきているので、これから巻き上げられとは思いもよらず、いくらでも払ってしまう。「国、県、建設省などからの認可を取得するには膨大な時間と経費がかかるが、その道の達人に依頼すれはわずか数日だ」と、タイに長い日本人に丸め込まれ、「裏金」と称した大金をだまし取られる例もある。

 ただ、コンサルティング会社が悪事を働いていることには変わらないが、相談を持ち込む側に非がないわけではない。相手を疑うことなく、聞かれたことを何でも喋ってしまうのだ。いくら金を貢いでも解決などせず、最後は会社を潰されたという事例も少なくない。もちろん、このようなコンサルティング会社は一部であり、ほとんどは誠実に仕事をこなしている。

 これはまた、日本人同士だけに起こる問題ではない。タイ人やタイ法人が絡む場合も多い。例えば、日本語を話す専属秘書を雇っていた日系企業の日本人社長の事例がある。有能なその秘書を多大に評価し、多くの仕事を任せ、求められるサインも確認不要のごとく署していたら、いつの間にか会社が秘書のものになっていたという。同胞だから信用してしまうのと同様に、日本語を話すというだけで信用度を高めてしまう、という詰めの甘さだ。サイン権者は日本人とタイ人を含めて少なくとも3人は確保すべきだ。

 また、特定の弁護士に長期に頼ると、会社の内情をち密に知られてしまう。良からぬ魂胆を持たれかねないので、定期的な交代を心がけたい。これは通訳にも言えることだ。

 タイでは結局、信頼できるタイ人弁護士を探さなければならない。タイだからタイ人弁護士で安心、とはもちろんならないが、先のような悪事を働くコンサルティング会社の日本人と比べればはるかに誠実だ。

 さんざん騙された挙句、最後は警察に泣きつくことになる。警察とはいえ、日本人のやり取りにタイ人が介入したいとは思わない。証拠も提示せずに、「今夜の飛行機で日本に逃げるつもりだ。空港で捕まえてくれ」と電話してきた被害者もいた。警察は令状なしに動けないのである。

戸島 国雄
元警視庁刑事部鑑識捜査官 元似顔絵捜査官 タイ警察・警察大佐
《newsclip》

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