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軍政下のタイ、来年2月に下院選 政治活動解禁で選挙戦スタート  

2018年12月11日(火) 22時49分(タイ時間)
プラユット首相の画像
プラユット首相
写真提供、タイ首相府
【タイ】タイ軍事政権は11日、政治活動を解禁すると発表した。政党活動禁止、5人以上の集会禁止、一部政治家の海外渡航禁止などの措置を解除する。

 タイ選挙委員会は同日、2019年2月24日に議会下院(定数500)総選挙を実施すると発表した。

 2014年の軍事クーデターでタクシン元首相派の民選政権を倒して発足した軍政は政治活動を全面的に禁止してきた。しかし、欧米諸国などに約束した下院総選挙が近づいたため、党指導部を選出する党大会の開催などを今年9月に解禁した。今回の措置で、政治活動はほぼ全面的に解禁され、各党は選挙戦に突入する。

 ただ、軍政が作成し昨年施行した新憲法の規定で、軍政が議員を事実上選任する議会上院(定数250)が議会下院とともに首相指名選挙で投票するため、下院選後も完全な民政移管には至らない。それどころか、軍政は上院というげたを履いた上で、ウタマ工業相が党首を務めるなど現職4閣僚が参加する自派新党パランプラチャーラット党を通じて下院で130―140議席以上を獲得し、政権を維持する構えだ。パランプラチャーラット党はタクシン派政党や地方の有力政治閥などから有力政治家多数が移籍するなど党勢を強めている。軍政はまた、事実上の地方遊説である地方閣議の開催、地方への予算投下などを頻繁に実施し、地盤固めに余念がない。

■政党支持率1位はタクシン派、2位軍政派 鍵握る民主党

 タイ国立開発行政研究院(NIDA)が11月20―24日に18歳以上のタイ人を対象に実施した世論調査(回答者1260人)で、政党支持率1位はタクシン元首相派のプアタイ党で31.8%だった。2位はパランプラチャーラット党で19.9%、3位はタイ民主党で17%、4位は若手実業家が立ち上げた新党、新しい未来党で15.6%だった。

 プアタイ党と新しい未来党は軍政との対決姿勢を打ち出し、妥協する気配はない。民主党はアピシット党首(元首相)が軍政に批判的だが、11月に行われた党首選はアピシット党首6万7505票、党内の軍政支持派が推すワロン元下院議員5万7689票と予想外の接戦になった。こうした党内の状況から、民主党が下院選後に軍政陣営に加わる可能性も指摘されている。


〈タイ政局の主な動き〉
 タイでは2006年以降、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン派と、伝統的な富裕層、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。反タクシン派が重視する伝統的な階級・民族秩序に東北部・北部の住民と低所得者層が挑戦する形で、タクシン派が選挙で勝ち続ける一方、反タクシン派は軍と司法、デモを駆使してタクシン派政権をひっくり返し、事態が収拾するめどは立っていない。

■2001年
警察官僚から実業家を経て政界入りしたタクシン氏率いる政党が、地方、低所得者層へのばらまき政策を掲げ、議会下院選で勝利。タクシン氏が首相に。
■2005年
任期満了にともなう下院選でタクシン派政党が議席の75%を得て圧勝。タクシン首相が2期目。
■2006年
反タクシン派がバンコクで大規模なデモ。タクシン首相が下院を解散、総選挙に踏み切るが、反タクシン派の民主党がボイコット。憲法裁判所が選挙無効の判決。9月に軍事クーデターが発生し、タクシン政権崩壊。
■2007年
軍事政権が民主主義を制限した新憲法を制定。民政移管のため実施された下院選で2代目タクシン派政党が勝利。タクシン派政権発足。
■2008年
反タクシン派デモ隊がバンコクの首相府、スワンナプーム空港などを占拠。最高裁判所が選挙違反でタクシン派政党を解党し、政権崩壊。民主党を中心とするアピシット連立政権発足。
■2010年
バンコク都心を占拠したタクシン派デモ隊を軍が鎮圧。90人以上が死亡、約2000人が負傷。
■2011年
下院選で3代目タクシン派政党が勝利。タクシン氏の妹のインラク氏が首相に就任。
■2013年
インラク政権・与党がタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の成立を図る。10月、民主党が大規模な反政府デモを開始。12月、インラク首相が下院を解散。
■2014年
1月から反タクシン派デモ隊がバンコクの主要交差点を占拠。2月の下院選は民主党がボイコットした上、民主党系のデモ隊が投票を妨害し、3月に憲法裁が選挙無効の判決。5月7日、幹部官僚人事をめぐる職権乱用を理由に、憲法裁がインラク首相ら10閣僚を解任。5月20日、軍が戒厳令を布告し、実権を掌握。同22日、クーデターを宣言し、インラク政権崩壊。
■2017年
軍政が民主主義を制限した新憲法を施行。インラク前首相が汚職裁判の判決前に国外に逃亡。
《newsclip》

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