2013年にヤンゴンを拠点に、ロードサービスをスタートしたSAT JAPAN ROAD SERVICE CO.,LTD(以下、SAT)の代表である山口弘隆氏にミャンマーの現状について話を聞いた。
◆中古車から新車へシフトする市場
ミャンマーは日本からの重要な中古車仕向け地として急成長を遂げた。2011年9月、ミャンマー政府は完成中古車輸入を解禁した。貿易統計データによれば、2011年の日本からミャンマーへの中古車通関台数は19,621台、2012年には120,805台と急増。その後日本からの中古車仕向け国のボリュームとしてはトップの国となった。ミャンマーでの年間自動車販売台数の約9割が輸入中古車となった。
しかし、2018年からミャンマー政府によって右ハンドルの自動車輸入の規制が入った。これにより日本からの中古車に多い右ハンドル車の輸入が原則禁止。ミャンマーはこれから中古車から新車へのシフトが進むことになるだろう。
◆ミャンマーにおけるロードサービスと交通安全の現状
変換期のミャンマーにおけるロードサービス市場はどうなのか?「ロードサービスを専門で行う会社は4年前までSATのみでした。車が壊れたら友人や整備工場の人がそこまできて道端で治してくれる。1960年代の東京オリンピックの時のような感覚でした」(山口氏)。しかし「最近は専門のプレーヤーが少しずつでてきて、2016年から2017年でロードサービスの依頼は2倍に急拡大しました」と指摘する。
更に中古車から新車へのシフトに伴い、ロードサービス業界にも変化が生まれた。新車が売れ始めて、最初からロードサービスを含んだ販売を行う新車ディーラーがでてきたことだ。「ヤンゴンでは1部のスズキディーラーやトヨタディーラーもオプションとしての販売を始めてくれるようになりした」(山口氏)。このように新車購入のお客様の要望に応じて、オプションとして附帯できるロードサービスも求められ、市場の広がりがでてきている。
ミャンマーでは現在交通事故数(死亡)は年間5000名だ。日本と比べて100倍以上の危険率(事故率)となっている。地方などで公表されていないのも入れるともっと高い。そんなミャンマーでSATは、2016年11月に第1回交通安全運動キャンペーンを開催した。その後も継続的にキャンペーンを各地で開催している。目的は、乗用車やオートバイ運転者が増加したミャンマーにおいて、交通ルール遵守を浸透させるためだ。在ミャンマー日本国大使館、JICAミャンマー事務所、ミャンマーの陸路運輸管理局、地元の交通警察、小中学校、ミャンマーの日系企業の協力を得ている。
キャンペーン実施横断幕を掲載、交通完全運動の模様を新聞各社やメディアで取材・報道、ホームページやフェイスブックなど)による告知も行う。キャンペーンではボランティアスタッフからも積極的に協力を得ている。第1回のキャンペーン実施中は、一般車両助手席、後部座席乗車人は、シートベルトの正しい装着方法を理解していない市民が散見され、実施中に停車させ正しい装着方法を教えることができた。バイク運転者に正しいヘルメットのかぶり方を教えた。
SATではミャンマーにおける交通事故件数等データと実施結果をモニタリングしながら、よりミャンマーに効果的な活動を多方面から行っていき、交通安全をミャンマー国内に浸透、ロードサービスの必要性も広めている。
◆日本式クオリティをミャンマーへ
2018年、ヤンゴンでは6台でサービスを提供している。スタッフ数は24名で対応。サービス依頼は1日6台ほどで3分の1が交通事故による依頼、残りがエンジントラブルだ。全体で月間150~180台くらいになる。山口氏は「ここ最近(2017年10年くらい)で、ロードサービスに対する考え方が一気に変わってきています。(交通安全の意識やサービスの品質が)日本のような形に変わりそうな予感がしています」と指摘する。
SATの差別化として、ロードサービスの提供自体が差別化になっているが、大事なことは日本式のクオリティ・サービスを提供することだ。しっかりと時間を守り、スタッフは制服着用。現場ではお客様の車を大事に扱う。車を載せる時も丁寧に手間をかけて行う。日本では当たり前のことを、ミャンマー風にアレンジしながら高品質のサービスを心がけている。
◆ミャンマーでの課題はサービス意識
ようやくミャンマーにもロードサービス、そして安全運転が広まってきた。しかし未熟で法律・ルールなど整備できていない国だ。また商品やサービスも少ない。
「サービスに対する意識の低さがミャンマーにはあります。高いサービスをミャンマー人はまだ受けたことがない、だからどのようにやれば良いかわからないのです」。更に「確かに重要なのは教育ですが、新しいことを広めていくには、日本企業として柔軟な対応を取れるかが大切です。日本のやり方が良いからという押し付けが嫌な国民性です。そのためミャンマーを理解して、お互いに心からわかり合ってやっていけるという日本の対応が必要です。彼らのレベルに合わせたサービス意識を向上が求められます」(山口氏)。
◆ミャンマー成功の秘けつ、それは汗をかくこと
山口氏はミャンマーで仕事をしているとホッとすると言う。「古き良き日本がまだここにあります。田舎に帰ったような感覚です。勝手に家に入ってくるし、暖かさも感じます。大人でも子供のような純粋さがあるんです」(山口氏)。「知人の勧めでミャンマーを訪問しました。それ以来、今までやってきた30年の車ビジネスの中で役に立てるのは何か?を考えました。日本とミャンマーの架け橋として社会貢献で何ができるか? それがロードサービスでした」と語る。ミャンマーでは当時、道が悪いと言っているだけで交通事故の撲滅の行動を何もおこしていない状況にあった。2016年におけるミャンマーでの事故発生件数で道路の不具合が原因だったのは全体の4%。その他の理由として多いのは、不注意、スピード超過含む違反、車両不良、飲酒運転、過積載が80%を占めていた。
ミャンマー人は知らないことを自らやらない。しかし周りがやると同じことを始める国民性だ。「自ら最初に汗を流さないと本当のことはわからない」と山口氏は指摘する。
ミャンマー陸運局によると2017年の時点で70万台の自動車が登録された。アセアンの主要国における1000人あたり自動車保有台数は、ミャンマーは約15台。マレーシアで400台、タイで250台、インドネシアで80台ほどであることから、将来のミャンマーの伸び代は大きくポテンシャルがある。中古車から新車へのシフトも始まったばかりだ。ここ数年以内に一気に市場は変化するだろう。その時にミャンマーに参入しても市場を取ることは難しい。ミャンマー自動車市場は今まさに大転換期だ。
<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
【川崎大輔の流通大陸】ミャンマー初のロードサービス、日本の安全を啓蒙
2019年2月6日(水) 11時23分(タイ時間)
《川崎 大輔@レスポンス》
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