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タイ下院選始動、軍政とタクシン派激突

2019年2月10日(日) 22時07分(タイ時間)
スダーラット元保健相の画像
スダーラット元保健相
写真提供、プアタイ党
プラユット首相の画像
プラユット首相
写真提供、タイ首相府
【タイ】軍事政権下のタイで8年ぶりに行われる議会下院(定数500)総選挙(3月24日投票)の立候補受付が8日に終了した。過去最多の81党、1万3921人が小選挙区350、比例代表150の議席を争う。

 タクシン元首相派対反タクシン派という構図は今回も変わらず、選挙後も不安定な状況が続く見通しだ。

 主要政党が選挙委員会に提出した首相候補(最大3人)は軍政派のパランプラチャーラット党がプラユット・ジャンオーチャー首相(元陸軍司令官、64)、軍政と対立するタクシン派のプアタイ党がスダーラット・ケユラパン元保健相(57)、チャチャート・シティパン元運輸相(52)、チャイカセーム・ニティシリ元法相・元検察庁長官(70)の3人、保守中道の民主党がアピシット・ウェーチャチーワ党首(元首相、54)、軍との対決姿勢を鮮明にしている新党、新しい未来党が自動車部品大手タイ・サミット・グループ創業者一族のタナートン・ジュンルンルアンキット党首(40)。

 故プミポン前国王の長女でワチラロンコン国王(66)の姉のウボンラット王女(67)を党の首相候補として届け出たタクシン派のタイラクサーチャート党は8日、前日夜に国王がウボンラット王女の政治関与を禁じたことを受け、党の首相候補名簿を取り下げると発表した。

 タイ国立開発行政研究院(NIDA)が1月2―15日に18歳以上のタイ人を対象に実施した世論調査(回答者2500人)で、各党の支持率はプアタイ党32.7%、パランプラチャーラット党24.2%、民主党14.9%、新しい未来党11%だった。

 軍政が作成し2017年に施行した新憲法の規定で、軍政が議員を事実上選任する議会上院(定数250)が議会下院とともに首相指名選挙で投票するため、軍政派は下院で130―140議席を確保すれば政権を維持できる。一方、プアタイ党など軍政と対立する勢力は下院で過半数を大きく上回る勝利を納め、民意を盾に上院に圧力をかけたいところだ。

 ただ、政党支持率からみると、どちらのシナリオも微妙な情勢だ。そうなると、カギを握るのは民主党、アピシット党首とみられる。アピシット党首自身は軍政に批判的な発言が目立つが、民主党とパランプラチャーラット党は支持層が重なる部分が多い。また、民主党とタクシン派政党は長年ライバル関係にあり、両党が手を組むのは非常に困難とみられている。

 タイではタクシン政権(2001―2006年)以来、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層の支持を集めるタクシン派と、伝統的な富裕層、南部住民とバンコクの中間層を中心とする反タクシン派の抗争が続き、政治・社会が混乱している。反タクシン派が重視する伝統的な階級・民族秩序に東北部・北部の住民と低所得者層が挑戦する形で、タクシン派が選挙で勝ち続ける一方、反タクシン派は軍と司法、デモを駆使してタクシン派政権をひっくり返し、事態が収拾するめどは立っていない。

 現在の軍政はタクシン派政権を倒した2014年の軍事クーデターで発足した。クーデターの引き金は民主党支持者による大規模な反政府デモだった。

〈タイ政局の主な動き〉
■2001年
警察官僚から実業家を経て政界入りしたタクシン氏率いる政党が、地方、低所得者層へのばらまき政策を掲げ、議会下院選で勝利。タクシン氏が首相に。
■2005年
任期満了にともなう下院選でタクシン派政党が議席の75%を得て圧勝。タクシン首相が2期目。
■2006年
反タクシン派がバンコクで大規模なデモ。タクシン首相が下院を解散、総選挙に踏み切るが、反タクシン派の民主党がボイコット。憲法裁判所が選挙無効の判決。9月に軍事クーデターが発生し、タクシン政権崩壊。
■2007年
軍事政権が民主主義を制限した新憲法を制定。民政移管のため実施された下院選で2代目タクシン派政党が勝利。タクシン派政権発足。
■2008年
反タクシン派デモ隊がバンコクの首相府、スワンナプーム空港などを占拠。最高裁判所が選挙違反でタクシン派政党を解党し、政権崩壊。反タクシン派の民主党を中心とするアピシット連立政権発足。
■2010年
バンコク都心を占拠したタクシン派デモ隊を軍が鎮圧。90人以上が死亡、約2000人が負傷。
■2011年
下院選で3代目タクシン派政党が勝利。タクシン氏の妹のインラク氏が首相に就任。
■2013年
インラク政権・与党がタクシン派と反タクシン派の政治抗争で投獄、訴追された人に包括的な恩赦を与える恩赦法案の成立を図る。10月、民主党が大規模な反政府デモを開始。12月、インラク首相が下院を解散。
■2014年
1月から反タクシン派デモ隊がバンコクの主要交差点を占拠。2月の下院選は民主党がボイコットした上、民主党系のデモ隊が投票を妨害し、3月に憲法裁が選挙無効の判決。5月7日、幹部官僚人事をめぐる職権乱用を理由に、憲法裁がインラク首相ら10閣僚を解任。5月20日、軍が戒厳令を布告し、実権を掌握。同22日、クーデターを宣言し、インラク政権崩壊。
■2017年
軍政が民主主義を制限した新憲法を施行。インラク前首相が汚職裁判の判決前に国外に逃亡。
■2019年1月
タイ選挙委員会が議会下院総選挙を3月24日に実施すると発表。タイで下院選が実施されるのは2011年以来。
《newsclip》

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