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タイ下院選 赤vs黄、対立の構図変わらず 

2019年3月26日(火) 03時21分(タイ時間)
【タイ】タイのプラユット軍事政権は今月24日、2011年以来初めての議会下院選挙を実施した。民主化を求める国内外の圧力に屈したかたちだが、事前の予想に反し、プラユット首相の続投を目指す軍政派の新党、パランプラチャーラット党が得票数で1位となり、衝撃が走った。

 各党の暫定得票数(開票率94%)は多い方から順に、パランプラチャーラット党794万票、軍政と対立するタクシン元首相派のプアタイ党742万票、反軍政の新党、新未来党587万票、反タクシン派の民主党370万票、旗幟を鮮明にしていないプームジャイタイ党351万票だった。タクシン派は2001年以来初めて、下院選で得票数1位を逃した。

 ただ、東北部と北部の住民、バンコクの中低所得者層を中心とするタクシン元首相支持者と民主化勢力を合わせた「赤派」(プアタイ党、新未来党)、貧困層や東北住民などの政治参加を拒む保守勢力「黄派」(パランプラチャーラット党、民主党)という色分けで得票数をみると、実は大きな変化は起きていないようだ。

 2001年以降の下院選はタクシン派政党と民主党という2大政党の対決が続いた。2006年のクーデターでタクシン政権を打倒した軍政が民政移管のため実施した2007年の下院選はタクシン派政党の得票数1234万票に対し民主党1215万票と僅差になった。タクシン派デモ隊によるバンコク都心部の長期占拠、治安部隊による強制鎮圧という重大事件の1年後に行われた2011年の下院選はプアタイ党1575万票、民主党1144万票だった。

 今回の下院選は、プアタイ党と新未来党で計1329万票、パランプラチャーラット党と民主党で計1164万票で、同じ陣営のプアタイ党から新未来党に、民主党からパランプラチャーラット党に票が流れたと考えると、説明がつきそうだ。

 パランプラチャーラット党は権威主義的な政治体制による政治社会の安定、新未来党は軍の改革とクーデターの再発防止、民主的な憲法の制定など、それぞれ「黄派」、「赤派」の主張を民主党、プアタイ党より先鋭化させている。両党が支持を集めたことで、両派の対立はこれまで以上に深まる恐れがある。

 「赤派」はタクシン政権(2001―2006年)で誕生した。それまで政治意識が薄かった東北部や北部の住民、貧困層が、タクシン政権のばらまき政策で恩恵を被り、投票で生活が変わることを知った。以来、タクシン元首相の忠実な支持者となり、それまで地方を無視してきた中央と対立するようになった。シンボルカラーは共産主義を思い起こさせる「赤」。

 数でまさる「赤派(=タクシン派)」は2001年、2005年、2007年、2011年と下院選で勝ち続けた。一方、旧貴族階級や富裕層、バンコクの中間層を中心とする「黄派」は、自分たちの「使用人風情」が選んだタクシン派政権に支配されることに強烈な反感を抱き、軍と司法、デモを駆使して反撃。2006年には大規模デモからの軍事クーデター、2008年には憲法裁判所によるタクシン派政党解党、2014年には再度、大規模デモからの軍事クーデターで、タクシン派政権を打倒した。同派の支持者はデモなどの際、故プミポン前国王の誕生日の色である「黄色」の服を着る。「赤派」を「赤い水牛」と呼び侮蔑することもある。
《newsclip》