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【川崎大輔の流通大陸】アセアンからの外国人自動車整備エンジニア その3

2019年10月15日(火) 11時57分(タイ時間)
亀井社長のベトナム大学訪問(ガレージフィックス)の画像
亀井社長のベトナム大学訪問(ガレージフィックス)
《撮影 川崎大輔》
左:キイ君、右:カン君(ヴィーテック)の画像
左:キイ君、右:カン君(ヴィーテック)
《撮影 川崎大輔》
店舗(ヴィーテック)の画像
店舗(ヴィーテック)
《撮影 川崎大輔》
橋本常務(ヴィーテック)の画像
橋本常務(ヴィーテック)
《撮影 川崎大輔》
スタッフ(ガレージフィックス)の画像
スタッフ(ガレージフィックス)
《撮影 川崎大輔》
日本の自動車ディーラー、整備会社では「社内に外国人整備人材を受け入れるべきか否か」という議論がなされている。しかしそこには大きな問題が隠れている。つまり「門戸を開けば外国人はきてくれる」という前提での議論だということだ。本来、最初に議論しなくてはいけないことは、優秀な外国人整備人材が入りたくなる魅力的な会社になるにはどうすべきかと考え受け入れ態勢の構築をしていく必要がある。

◆受け入れ態勢を作り、ベトナム人と共存共栄(ガレージフィックス)

株式会社ガレージフィックス(亀井良直社長、石川県金沢市)では、現在5名のベトナム技能実習生が自動車整備人材として働いている。このような受け入れ企業は、ベトナム人の生活や教育にかかわる受け入れ体制を自ら作り出していく必要がある。企業ごとのやり方は異なる。しかし、1ついえることは、ただ単にベトナム人を受け入れただけでは、彼らとウィンウィンの体制を構築していくことできない、ということだ。

亀井社長は「当時は、言葉が通じたない、指導の仕方がわからない、どういった考えかもわからない。一緒に働くのは不安、外国人を受け入れ反対のスタッフもいました。」と語る。しかし今では、日本人スタッフとの仲は良い。もともと男子寮があったので日本人とベトナム人を一緒に住まわせることにしたのだ。現在、1軒家に日本人3名、ベトナム人5名、で一緒に住んでいる。台所、お風呂は共有だ。ベトナム人が料理を作った時に、一緒に食べて話が盛りあがったりしている。ベトナム人だからと特別扱いをせず彼らも担当を決めて掃除などをやっている。

日本人が常に一緒にいるということで、掃除の仕方、整頓の仕方、道徳観などを日本人から学べている。合計点数が一定レベル行くと、寮のみんなで焼肉に行けるというご褒美がある。寮への点検は月1回、日本人責任者が訪問して点数をつける。トイレや、お風呂(湯垢、カビ)や、床にゴミやホコリ落ちてないか。全部で20項目くらいを毎月チェックする。

入ってきた時ばかりの時、コミュニケーションを取るのが難しかった。現在は、月に2回外部から講師を招いて社内で日本語教育を行っている。ベトナム人スタッフが休みの日、10:30から16:30までの間は日本語勉強会を行う。彼らも仕事が終わって寮に帰って、自主的に「みんなの日本語」という教科書で勉強している。3年目になるとベトナム人などは日本語で冗談をいえるようになった。今年(2019年)は、全員がN3の試験を受けようというレベルにまで成長した。

ベトナム人の整備技術の向上に関しては、社内で毎月1つの整備作業に対してタイムアタックを行っている。「例えばタイヤ交換は誰が早くできるのか、社内の標準時間を決めてゲームをする。楽しみながら自然とベトナム人の整備技術があがっています」(亀井社長)。更に「技術は、ベトナム人は最初言葉がわからない部分、やっているのを見て彼らなりに認識・解釈をしていって覚える能力があります。日本人よりも覚えが早いです」と指摘する。

◆現場の業務体制作りと言葉の壁の乗り越え方(ヴィーテック)

株式会社ヴィーテック(相本直樹社長、山口県下松市)では、2名のインターンシップ生をベトナムの理工系大学から自動車整備研修として受け入れた。いきなり、大きな壁がはだかった。会社の近くで住居を借りるのが外国人ではNGとなってしまった。そこで、ヴィーテックでは、今後外国人が増えることも考えて、思い切って会社の3軒隣の築40年~45年の中古住宅を購入。水回りから風呂ユニットまでリフォームをかけた。近所の方々には、相本社長が直々に挨拶し住むところを整えることができた。最近ではお好み焼きを彼らの家で一緒に作ったり、花火大会に行ったり、山口県の観光名所である錦帯橋(岩国市)を訪れた。

ヴィーテックの社員も積極的に交流している。「彼らが日本のことを本当に好きで、礼儀正しいところが、社員の共感も呼んでいます」(相本社長)。更に「日本語は時間が経てば上達します。ただ技術はまだないため教育をしていきます」と語る。

ヴィーテックはコバック加盟店となっている。コバックで使うオペレーションチェックシートを、ベトナム人のインターンシップ生のためにカスタマイズして活用している。現場の責任者である橋本常務は「理解度を確かめて、それが担保できたら実践に移すという教育体制を作っています。自社や自分たちにとっても、教育に対する気付きは多かったと思います。彼らのお陰でその重要性に気付いたということですね」と指摘する。

言葉の壁に関しては、「できるだけわかりやすい言葉や表現に置き換えて、日本語の理解を促進させることを意識しています。翻訳ソフトには頼らないことが大事だと思っています。そうすると、自分たちも努力しないし、お互いに成長がない。昔はわからないことは辞書で調べるということで、自分の知識として蓄積されたという経験があります。それと同じようなことかもしれません」(橋本常務)。

彼らの業務として最初にやってもらったのは洗車だ。橋本常務は「洗車を業務の第1の基本としています。これは、車を大切に扱うということの重要性を習得してもらうためです。彼らに覚えてもらいたいことは、(1)仕事に対する心構え、(2)お客様に大事にする姿勢、これらの2点です。日本人は車を大切に扱います。洗車後に判明した小キズなどを大変気にします。そういう日本人の細かさを教えることが大事だと思っています。あとは、車検時に点検するブレーキ回り。今は汚れ落とし、グリス塗りが中心です」と語る。ヴィーテックでは、インターンシップ生のこれらの作業のあと、整備士が作業状態をチェックしている。

◆「選ぶ」ではなく「口説く」という姿勢

外国人を雇用するための社内の受け入れ体制の構築として、外国人採用の意義を社内で共有しておくということも重要だ。特に、人事社員や配属先の現場責任者へ、必要性を浸透させておく。入社後の、外国人採用の意義が社内で浸透していないために配属先で孤立してしまい退職に至るケースがある。そういった意味で、配置するのにどの上司につけるかは非常に重要だ。

うまくいっている会社は外国人の魅力をわかっている上司の下につける、もしくは外国人をしっかり評価している上司の下につけている。日本人とは異なる工夫を取り入れ、外国人を受け入れていくことが今求められている。優秀な外国人を雇用するには「選ぶ」ではなく「口説く」という姿勢が必要だ。「もう日本では働きたくない」と本気で外国人労働者が日本に背を向けるようになる前に我々は真剣に彼らとの共存を考える必要がある。社会の一員として、共に生きる会社の仲間として、迎え入れる覚悟が必要だ。

<川崎大輔 プロフィール>大学卒業後、香港の会社に就職しアセアン(香港、タイ、マレーシア、シンガポール)に駐在。その後、大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年より自らを「日本とアジアの架け橋代行人」と称し、アセアンプラスコンサルティング にてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。2017年よりアセアンからの自動車整備エンジニアを日本企業に紹介する、アセアンカービジネスキャリアを新たに立ち上げた。専門分野はアジア自動車市場、アジア中古車流通、アジアのアフターマーケット市場、アジアの金融市場で、アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。
《川崎 大輔@レスポンス》

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