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タイ政府の甘い見通し、遅い交渉、責任転嫁 ワクチンめぐるアストラゼネカとの内部文書流出 

2021年7月20日(火) 15時47分(タイ時間)
【タイ】タイ王室傘下の製薬会社サイアムバイオサイエンスのタイ工場で製造する英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンをめぐり、タイ政府とアストラゼネカのやりとりを記した内部文書が流出した。

 文書からみえてきたのは、タイ政府の甘い見通しと交渉の遅さ、責任転嫁を図る体質などで、政府への批判が強まっている。

 内部文書は6月25日付のアストラゼネカ幹部からタイのアヌティン副首相兼保健相宛のものと、6月30日付のアヌティン副首相からこの幹部に宛てたもの。アヌティン副首相は文書の内容を認めている。

 アストラゼネカ側の文書には、昨年9月時点で、タイ政府がワクチンの必要量を月300万回分と判断していたこと、アストラゼネカがタイに国際的なワクチン調達の枠組み「COVAX(コバックス)」に参加するよう提案したことなどが記されている。タイは現在に至るまで「COVAX」に参加していない。

 また、アストラゼネカ側の文書によると、サイアムバイオサイエンスのワクチン製造量は1億7460万回分で、このうちの34.9%、6100万回分をタイに供給する契約となっていた。アストラゼネカはタイへの供給量を月500万~600万回分と見込んでいた。タイが最終的な契約を結んだのは今年5月。インドネシア、ベトナム、フィリピンなど他の東南アジア諸国はサイアムバイオサイエンス製のアストラゼネカワクチンの購入契約を遅くとも今年1月までに結んでいた。

 アヌティン副首相の文書は、新型コロナの感染が急拡大しているとして、アストラゼネカに対し、サイアムバイオサイエンスの製造量の3分の1以上、最低でも月1000万回分のワクチンが必要だと主張した。

 タイの総人口はタイ人、外国人合わせ約7000万人。タイ政府は年内に1億回分のワクチンを調達し、人口の約7割にワクチンを接種する目標を掲げている。2月に中国・科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)とアストラゼネカのワクチンを輸入し、接種を開始。6月にはサイアムバイオサイエンスの工場でアストラゼネカのワクチンの国内製造を開始した。

 しかし、4月以降、国内の感染状況が急激に悪化する一方、ワクチンの供給量は伸び悩んでいる。タイ政府はアストラゼネカの国産ワクチンが年内に6100万回分供給されると主張していたが、実際の供給量は輸入も含め7月16日までで819.4万回分だった。タイ政府はシノバック製のワクチンを輸入し急場をしのいでいるが、供給量が限定的な上、シノバックのワクチンの有効性に対する疑念がタイ国内で浮上した。

 こうした中、タイ政権幹部は最近、アストラゼネカが供給量の約束を守っていないかのような言動を繰り返していた。しかし、今回の文書が流出すると、タイのメディア、世論は、責められるべきはタイ政府だと批判。ネット上には「誤解していた。工場の生産が間に合わないのではなく、政府の発注が遅かった」、「間違っても自分が正しいと思う人は間違う人より恐ろしい」といった批判のコメントが殺到している。

 アストラゼネカとサイアムバイオサイエンスをめぐっては、タイの野党政治家タナートン・ジュンルンルアンキット氏が、契約の経緯や内容が不透明だと批判していた。タナートン氏はサイアムバイオサイエンスをめぐる一連の発言で、国王批判を禁じた不敬罪に抵触したとして、タイ・デジタル経済社会省に刑事告発された。

 タイの新型コロナワクチン接種回数は19日までで累計1454万7244回、19日は24万6848回だった。2回の接種を終えた人は累計347万9726人。
《newsclip》