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タイ・カンボジア世界遺跡紛争 プレアビヒア前線取材

[画像]右がタイ軍、山道をはさんで左がカンボジア軍 右がタイ軍、山道をはさんで左がカンボジア軍

国境線は山道 両軍3メートルで対じ

 タイ国境に近いカンボジア領内の山上にあるヒンドゥー寺院遺跡「プレアビヒア(タイ側呼称、カオプラウィハーン)」の世界遺産申請(7月8日に認定)をきっかけに再発した国境紛争。タイとカンボジアはそれぞれ1500人規模の兵力をプレアビヒアにはりつけ、にらみ合いを続けている。両政府は段階的撤兵による兵力引き離しの原則合意に達しているが、詳細は今後に協議に委ねられ、実施には至っていない。政治的には緊張状態が続いているが、前線の雰囲気は緩やかな現地を訪れた。

テントの張り合い、銃片手に世間話

 タイ東北部シーサケート県カンタララック郡。プレアビヒアに向かう唯一の道路は、5―6キロ手前のカオプラウィハーン自然公園入り口で封鎖され、軍の許可・同行がなければメディアの入域も規制されている。

 タイ東北部を管轄する第2軍管区司令官の現地視察に合わせて取材を申請し、軍の案内で地雷注意の標識が立つプレアビヒア入り口のわきから、山道を伝って森の中に入った。プレアビヒア自体は木々に囲まれ、タイ領土からは見ることが出来ない。

 山道の両わきには陸軍兵士やレンジャー部隊がテントを張り、銃を担いで行き来している。そのような状態の山道を歩いているうちに、左側に陣取っている兵士の服装がおかしいことに気付く。よくよく見るとカンボオジア兵。山道が国境線となり、その両わきわずか3メートル隔てただけで両軍が対じしていた。

 銃は担いだり構えたりしているものの、お互いに相手を気にする素振りはない。先に進むと、どちらの領土なのか確認しないと分からないほど、両軍の兵士が入り乱れていた。テントの数だけは競い合っているかのようで、国境線ぎりぎり、トウモロコシ畑の隙間、岩の上までにもテントが立っている。どのテントも洗濯物を干していたり、飯ごうで食事を作っていたりと、あくまでものんびり。一触即発といった雰囲気はない。

いまだ残る広大な地雷原

 プレアビヒア一帯にはカンボジア内戦のころの地雷が今なお数多く残っている。ほとんどはカンボジア内戦でタイ側にも越境していたポルポト派が1980年代に埋設したもので、地雷原の広さはプレアビヒアと隣接するシーサケート県沿いで500平方キロに及ぶ。7月にもタイのレンジャー部隊の兵士が地雷を踏んで片足を失った。

 タイ全土の国境地帯で地雷撤去に当たっているのは「タイ地雷除去センター(TMAC)」という爆発物処理班(EOD)といった専門家が集まる軍属部隊。カンボジア国境を管轄するのはTMAC内の「HMAU―3」部隊だ。カンボジア国境地帯の地雷埋設面積は1943平方キロで、タイの隣国4国の国境沿いに埋められている地雷の4分の3を占めるという。

 TMACはプレアビヒア一帯で日ASEAN統合基金(JAIF)の支援を受けたタイの民間団体「人類のためのメコン組織(MOM)」との協働により、地雷撤去作業を実施。2005年から2006年にかけては日本NGO支援無償資金協力「タイ王国カオプラヴィーハン地域復興支援地雷除去プロジェクト」として、日本の「人道目的の地雷除去支援の会(JAHDS)」から協働支援を受けた。

 HMAU―3がこれまでにプレアビヒア周辺で撤去作業を行ったのは50平方キロでシーサケート地域全体の10%のみ。1日に数個撤去できることもあるが、何も見つからない日も多い。対人地雷禁止条約(オタワ条約)により、タイは2009年4月30日までに地雷の撤去を終了させなければならないが、実現は全く不可能だ。

 プレアビヒアの西側で7月、歩行可能な道が1本のロープで確保されただけの地雷原がメディアに公開されたが、通常は国境付近の立ち入りは禁止されている。地雷撤去作業の終了ははるか先の話で、プレアビヒアが再公開されたとしても、観光客は常に地雷に気を付けなければならない。


〈プレアビヒア〉
 クメール王国が11―12世紀に建立したとされる寺院遺跡。タイとカンボジアが領有権を争い、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領 とする判決を下した。しかし、がけの上にありタイ側からしかアクセスが困難な上、周辺の国境が未画定のままで、両国間の火種となっている。7月に世界遺産に登録され、これを不服とするタイの宗教団体メンバー3人が同15日、プレアビヒアに不法入国し抗議の座り込みを行い、この事件を機 に、タイとカンボジアの軍隊が周辺地域でにらみ合う事態となっている。また、タイのサマック政権はカンボジアによるプレアビヒアの世界遺産申請を支持したことから野党、反政府団体、上院などの反発を受け、外相が辞任に追い込まれた。


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