Jones Lang LaSalle (Thailand) Limited
来住 幸典 氏 (National Director Japanese Business)
タイの不動産はミニバブル?
――バンコクの不動産市場について
タイ史上初の低金利を背景に、バンコク首都圏で住宅の開発が活発化、土地やコンドミニアムなどの取引価格が急上昇しました。人々がある資産に信頼をよせ、儲けが大きいと思えば、その資産は値上がりします。値上がりを見て信頼は高まり、経済のファンダメンタルズと関係なく、累積的に上昇は起こります。いわゆる今の状況は、「ミニバブル」の様相を呈しています。特にスクムビット界隈では雨後のタケノコのようにコンドミニアムが建ち並び、続々と新物件が着工されています。工事着工を急ぐあまり、一昨年施行された環境影響査定(Environmental Impact Assessment)関連の許認可を取得しないまま、プロジェクトに着手する開発業者も見受けられます。認可の未取得は、竣工の遅れや各住戸の所有権移転登記の遅れにつながる可能性があります。
――供給過剰の心配は?
現在工事中のコンドミニアムが完成する2005〜06年以降、供給過剰に陥り、二次流通市場での取引価格の下落が予想されます。将来的に不良債権の種になるという懸念も出始めています。実際、政府が不動産優遇策を撤廃した昨年末ごろから、地場住宅デベロッパーによる土地仕入れがほぼ一巡、市況が穏やかにピークアウトを始めています。今年以降、市況は小刻みに変化をみせ、潮目を変えていくでしょう。
――オフィス市場について
大型新築ビルの空室率は1999年のピーク時の38%から現在18%まで、ほぼ半減しました。昨年末ごろからテナントの増床需要が急激に高まっています。弊社がリーシングを受注しているセントラル・ワールド・プラザ(旧ワールドトレードセンター)隣の「セントラル・ワールド・タワー」の年末もしくは来年の竣工まで、都心部で大規模な物件の竣工はなく、ワンフロアーで1,500平米以上のスペースを確保できる物件の品薄感が顕著になってきています。
日系オフィスではタイ最大手の仲介実績
――JLLグループについて
不動産投資コンサルタントおよびプロパティ・マネジメント会社として世界最大級です。本社は米シカゴ、世界35カ国100カ所の主要都市で6,500万平米の商業不動産を管理、ニューヨーク証券取引所に上場しています。不動産投資マネジメントを担当する「ラサール・インベストメント・マネジメント」の資産運用は、総額268億ドル(約3兆円)に達します。今年は、ニューヨークのワールド・トレード・センター跡地で進行中の再開発プロジェクトのアドバイザー並びに専任リーシングエージェント業務を受注。2008年開催予定の北京オリンピックでは、中核施設となるオリンピック・グリーン(選手村、コンベンションセンターなど)の開発コンサルタント業務を引き受けます。
――JLLタイ支社の概要を
タイ支社は90年の設立です。法人顧客向けのオフィス、商業施設、商業不動産の仲介をベースに、不動産鑑定評価、リサーチ、ビル管理、ファシリティ・マネジメントなど幅広い業務を提供しています。96年には在タイ日本企業の不動産ビジネスをあらゆる側面から支援する目的で、「日本業務部」を開設しました。弊社の場合、日本を含むアジア地域はシンガポール支社が統括しています。タイの不動産価格はシンガポールや香港と比較して安価なため、同地域の収益源(プロフィット・センター)的立場には、まだ達していません。
――タイ支社のこれまでの実績は?
常に「透明性と中立性」に重きをおいたコンサルティング仲介を手がけて参りました。日本人の方々にも良く知られている物件としては、泰日協会学校(バンコク日本人学校)土地、バンコクシティタワー、パークビューマンションなどの仲介実績があります。ほか、サムイ島リゾート用地、日系工場・倉庫など、数多くの物件の仲介を手掛けてきました。昨年は日系スーパーのジャスコ・ラタナティベート店(52ライ=8万3,200平米)を、流通大手セントラル・グループのショッピングセンター(SC)管理会社、セントラル・パタナ(CPN)への売却を仲介。日本業務部を開設して以来の、最大規模の物件でした。オフィス仲介では、999ラマビル、CRCタワー、ラマランド、バンコクシティタワー、ハリントンタワーなど、リーシングエージェントとして、数多くの日系テナントを誘致、日系オフィス仲介ではタイ最大手と自負しています。
――不動産鑑定部門について
タイ空港公社(現AOT)のバンコク国際空港(ドンムアン空港)、タイ発電公社(EGAT)、国際電話の国営CAT、金融再編機構(FRA)などの政府官庁ほか、米国大使館、シンガポール大使館など手掛けてきました。日系では、三井物産が顧客です。また、ファシリティ・マネジメントとしては、英総合金融グループのHSBC、石油大手のシェル、日用品大手の英蘭系ユニリーバなど、欧米系大手企業の現地社屋ビルを管理しています。
新空港周辺では複雑な規制に留意
――不動産取引で注意する点は?
現在注目を浴びている、新バンコク国際空港(スワンナプーム空港)周辺で物流倉庫などを建てる場合、用途地域法に加えて、内務省が昨年12月に施行した、同空港から半径1.5キロメートル以内の建物の高さと延床面積の規制、バンコク都庁施行の土地利用の規制などを把握しておく必要があります。この3つの規制が複雑に絡み合っているので、土地は取得できても上物を建てられないという最悪の事態も考えられます。需要が急激に高まっている土地なので、用地選定の前に専門家にご相談されることをお勧めします。
――御社の今後について
オフィスビル、店舗ビル、マンション、工場用地など商業不動産をずっと眺め、じっと考えてみると、バンコクの不動産市場がこの10年で著しい変貌を遂げてきたことに気付きます。あいまい模糊した古い取引慣行が徐々に変わりつつあり、欧米で培われてきたDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)などの不動産投資分析手法が業界の取引慣習に大きな変化をもたらしています。弊社はタイ支社設立以来の14年間、常に最高水準を目指し、確固たる地位を築いてきました。今後も不動産鑑定評価・調査などの総合力を駆使し、お客様が抱える問題を共に考え、お客様起点の最適なソリューションを提供していく所存です。そして不動産新時代で勝ち残るための真のパートナーを目指します。
――ありがとうございました
■バンコクのコンドミニアム価格
投機目的の場合にテナントを確保しやすい立地として、スクムビット、ラチャダムリ、プルンジットの各地区に建設が集中。土地仕入れ、設計施工、販売、引き渡しまで、いかに短期間で終わらせるかが、プロジェクト成功のカギ。そのために、投機目的の顧客に対して「賃料利回り保証」付きで住戸を販売するデベロッパーもある。JLL調査による平均販売価格は1平米当たり5万3,000バーツだが、新築の募集販売価格は7万〜8万バーツ、さらには10万バーツに達する物件も。イラク戦争、新型肺炎(SARS)が騒がれる前は、新築コンドミニアムの着工数が少なく、中古物件で4万3,000バーツが相場だった。この半年〜1年で倍に。
■バンコクのオフィス賃貸料
大型新築ビルでみた場合、ラマ4世通りからナラティワート・ラチャナカリン通りまでのサトン通り、ラマ4世通りとシーロム通りの交差点付近、ワイヤレス(ウィタユ)通りに人気が集中。同地域の150平米の貸室の平均賃料は1平米当たり450〜530バーツ。バンコクのオフィス総延床面積は約700万平方メートル。東京は約その3倍で、空室率は8%。
住所:
19/F Sathorn City Tower 175 South Sathorn Road, Sathorn District, Bangkok 10120
電話:0-2679-6500 (内線320、きし) ファクス:0-2679-6517
Eメール:yukinori.kishi@ap.joneslanglasalle.com (来住)
ウェブサイト:www.joneslanglasalle.co.th/jp/