【タイ】タイ東部ラヨン県マプタプット地区で計画されている化学、鉄鋼などの64事業が環境保護に関する憲法の要件を満たしていないとして裁判所命令で凍結された問題で、東部で乗用車工場の建設を計画している米自動車大手フォード・モーターがタイ政府に対し、今月15日までに明確な状況説明を行うよう要求した。見通しが不透明な場合は工場の建設地を他国に移転する可能性があるという。
タイ政府はマプタプットの工場建設を再開、先行させ、並行して環境・健康アセスメントなどを行う方法が可能かどうかを裁判所に聞く方針だが、フォードの理解を得られるかどうかは不明。説得に失敗すれば、投資額200億バーツに上る工場を失うことになる。マプタプット問題では日系企業からも早期解決を求める声が上がっている。
フォードはマツダと合弁でタイに工場を設立し、乗用車、ピックアップトラックを生産している。09年のタイでの販売台数は16・1%減の7632台。
2007年に軍事政権が導入したタイの現行憲法は、地域社会の環境、天然資源、健康に大きな影響を与える恐れがある事業に関し、▽健康・環境アセスメントの実施▽公聴会の開催▽環境、健康に関する民間機関の代表と環境、天然資源、健康に関する調査研究機関の代表が構成する独立機関からの意見聴取――を政府に義務付けている。しかし、タイの政局はタクシン元首相派と反タクシン派の抗争で混乱が続き、2008年末に誕生した反タクシン派の現政権も新憲法に対応する法整備を怠っていた。
こうした中、タイ中央行政裁判所は昨年3月、マプタプット地区で深刻な環境汚染が起きているとした原告住民の訴えを認め、全域を公害防止地域に指定するようタイ政府に命令。これを受け同地区の住民と環境保護団体がタイ国営石油会社PTTなどの事業が憲法の要件を満たしていないとして行政裁に建設中止を求め、昨年9月29日、76事業に対し凍結命令が出た。タイ政府の控訴を受け、タイ最高行政裁は昨年12月、工業団地の拡張や物流関連など11件の再開を認めたものの、化学、鉄鋼など65件については凍結を継続するよう命じた。このうち大和工業が64%出資する鉄鋼メーカー、サイアム・ヤマト・スチール(SYS)の第2工場は、現行憲法が施行される前に事業許可を得ていたとして、年末に事業再開が認められた。
凍結中の64事業にはPTT、タイ王室系コングロマリットのサイアム・セメント(SCC)の大規模事業やJFEスチールなどの日系事業が含まれる。タイ工業省によると、このうち▽タイ仏合弁のグロー・ヘマラート・エナジーの発電事業▽SCC傘下の塩化ビニルメーカー、タイ・プラスチック・アンド・ケミカル(TPC)の増産計画 ▽AISCOリソーシズの鉄鋼生産事業▽PTTアロマティクス・アンド・リファイニング(PTTAR)の生産効率改善事業――の4事業が昨年末までに計画中止を決めた。工業省は4事業の中止は以前に決まっていたもので、凍結命令とは直接関係がないと主張している。
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