【カンボジア、タイ】ブラジルで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は29日、2008年に世界遺産に登録されたカンボジアの山上遺跡プレアビヒアの管理計画の検討を来年に先送りした。プレアビヒア周辺の土地の領有権を主張するタイが管理計画の承認で国土を侵犯される恐れがあるとして強硬に反対したため。タイとカンボジアの関係は国境紛争に加え、タイの現政権と対立するタクシン元タイ首相へのカンボジアの接近で冷え切っており、当分は「冷戦」が続く見通しだ。
タイ政府は世界遺産委員会に対し、プレアビヒアの管理計画が承認されればユネスコからの脱退も辞さないと強い姿勢で警告した。また、2008年末のバンコク空港占拠で知られる反タクシン派団体「民主主義のための市民同盟(PAD)」が27日、バンコクのユネスコ事務所前で数百人規模の抗議集会を開き、計画反対を訴えた。PAD幹部は28日にタイのアピシット首相と会談し、プレアビヒア周辺のカンボジア軍を武力制圧するよう提案したが、さすがにこれは首相に拒否された。
プレアビヒアはカンボジアのクメール王国が9―11世紀に建立したヒンドゥー寺院遺跡。タイ、カンボジア国境のがけの上にあり、タイ側からしかアクセスが困難だが、両国が領有権を争った末、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判決を下した。ただ、周辺の国境は未画定のままで、カンボジアが世界遺産登録を申請した際に、タイは共同登録を主張して横やりを入れた。登録後はプレアビヒア周辺で両国軍の小競り合いが度々起き、双方に死者が出ている。国境紛争に加え、カンボジアは昨年、タイで汚職で懲役2年の実刑判決を受け国外逃亡中のタクシン元首相をカンボジア政府顧問に任命。タクシン氏が同年11月にカンボジアを訪れ、タイ、カンボジアの双方が大使を召還する事態に発展した。