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国王支持演説のタイ人俳優、不敬罪免れる

2010/7/31 (23:08)| 主要ニュース  社会

【タイ】タイ人男優・歌手のポンパット・ワチラバンジョンさん(50)が公の場でプミポン・タイ国王のことを「お父さん(タイ語で「ポー」)」と呼び、タイの演歌歌手に不敬罪で告発された問題で、タイ警察は28日、学識者と弁護士から意見聴取した結果、ポンパットさんの発言は国王への忠誠心を示したもので問題はなかったとして、捜査を打ち切った。タイには不敬罪があり、国王夫妻、王位継承者、摂政に対する批判は重い刑事罰の対象となる。

 ポンパットさんは5月16日、タイ放送業協会が放送関連の業績を称えるナータラート賞の授賞式で助演男優賞を受賞し、壇上で「ポーは今も、この家の面倒をみて、家族の幸せを守るため、苦労している」「ポーを非難し、嫌い、家から追い出そうとしている人がいるが、出て行けと言いたい。なぜならここはポーの家だから」「私は国王を愛しています。命を陛下に捧げる!」などとスピーチした。会場の俳優、歌手らの多くは立ち上がって拍手を送り、涙ぐむ人もみられた。授賞式の様子はテレビで生中継されて大きな反響を呼び、動画投稿サイト、ユーチューブに投稿されたこのスピーチの再生回数は200万回近くに上っている。

 タイでは2005年の下院選で議席の75%を占めたタクシン政権(2001―2006年)が翌2006年、軍事クーデターで追放され、以来、タクシン政権の低額医療制度やマイクロファイナンスなどで恩恵を受けた低所得者層、東北・北部などの地方住民がタクシン派、タクシン氏を反王室、腐敗政治家と批判する特権階級、バンコクの中間層が反タクシン派という大まかな色分けで、政治闘争が続いている。今年3―5月にはタクシン派のデモ隊と治安部隊がバンコクで衝突して市街戦状態になり、90人近くが死亡、1400人以上が負傷した。ポンパットさんは反タクシン派団体「民主主義のための市民同盟(PAD)」の支持者で、PADの集会で度々登壇し、タクシン氏を非難していた。

 タイの支配階級は長年、「国民は国王の良き子ども」「タイは平和な家族・農村国家」というイメージをテレビCMなどで国民に刷り込んできた。しかし、経済・社会格差の拡大と、タクシン政権時の直接的な地方・貧困層支援策による政治的な覚せいで、一部ではこうした幻想が崩れた。タイ統計局によると、昨年、所得が最上位10%の世帯は月の平均所得が1人2万6678バーツ(約7万1500円)だったのに対し、最下位(10位)グループは月1169バーツ(約3100円)だった。

〈プミポン・アドゥンヤデート国王〉
 1927年、米国マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれ。祖父はタイの現王朝の中興の祖である5代目チュラロンコン大王、父はチュラロンコン大王の数多い息子の1人だったマヒドン皇太子、母は中国系の一般女性。
 タイの絶対王政を廃した1932年の立憲革命とその後の第2次世界大戦の影響で、1934年から1952年まで主にスイスに滞在し、同国のローザンヌ大学で政治学、法学などを学んだ。
 スイスで共に暮らした兄が8代目の王に即位した直後に変死したため、1946年に9代目の王に即位。ただし、帰国して戴冠式を行ったのは1950年で、今年が60周年となる。
 国王はタイへの本帰国後、全国で多数の農業プロジェクトを手がけ、遠隔地の視察、低農薬農業や代替燃料の開発などに取り組んだ。「微笑みの国」と呼ばれるタイの国王でありながら、公式の場ではほとんど笑顔を見せず、峻厳なイメージがある。一方、社会的弱者の救済に熱心とされ、国民からは「ポー(お父さん)」と呼ばれ、国父として深く敬愛されている。
 1950年に結婚した王族のシリキット王妃との間に、ワチラロンコン皇太子、ウボンラット王女、シリントン王女、チュラポン王女の1男3女。
 英語の評伝が2冊あるが、いずれもタイでは発禁。
 米経済誌フォーブスがまとめた2010年の世界の王族資産番付では、推定資産300億ドルと、産油国の王族を退け、3年連続で1位に輝いた。英紙インディペンデントの今年5月の記事では資産200億ポンドで国家元首の中で1位だった。

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